
第二の人生として、滋賀県長浜市『極樂寺』の第19世住職となった後藤さん。前編に引き続き、『極樂寺』の歴史や地域とのかかわり、今後について伺いました。
前編の記事は下記をご覧ください。
>>空き寺だった『極樂寺』で第二の人生を|警察官から会社員を経て住職へ(前編)
『極樂寺』の歴史

極樂寺は、真宗大谷派 京都教区の寺院です。元禄3年(1690年)釋了貫師が本願寺第16世一如上人木仏尊像を下付したことにより、念仏道場から真宗大谷派極樂寺として公に認められました。

真宗大谷派は、親鸞聖人を宗祖とする約679万人以上の信者(文化庁『宗教年鑑 令和7年版』より)を持つ日本最大級の仏教教団です。本山は京都の東本願寺(真宗本廟)。
真宗大谷派第12代門首の教如(きょうにょ)上人は、豊臣秀吉の命により本願寺を離れ、約10年間にわたり流浪(流転)の生活を送りました。『極樂寺』は教如上人の生活を支えてきた寺院の1つです。
このような深い歴史のある寺ですが、移住することについてはどのような考えだったのでしょうか。
警察官と住職の意外な共通点

住職とは、そのお寺に住み込んで管理する僧侶という意味です。後藤さんも米原市から長浜市に住民票を移して寺院の庫裏(くり・居住部)で生活しています。
「妻も坊守(住職の妻)ですので、将来的には寺院に居住の予定ですが、妻も仕事がありますので、現在は単身赴任のような感じでお寺を預かっております」
以前は長浜警察署で勤務したこともあり、地名は知っていたという後藤さんですが、一人で寺院に住むことに不安はなかったのでしょうか。
「警察官として駐在所に赴任すると、最初に言われるのは『一日も早く地域の皆さんと信頼関係を築くこと』です。不思議と地域の皆さんと信頼関係を深く結んでいる駐在所の管内は、犯罪の発生率が少ないと言われます」
駐在所の警察官と寺院の住職には、似たような役割があると語ってくれました。地域住民の安全と安心を守るという目標においては、駐在所もお寺も重要な役割を果たしているようです。
「正直な気持ちとしては、地域の皆様に受け入れてもらえるのだろうかと不安でした。今は、一日も早く御門徒様との信頼関係を作っていこうと日々努力しています」
駐在所では、地域の皆様が自宅で栽培した野菜を駐在所に持参したり、駐在所でお茶を飲んで雑談したりすることがあります。寺院も同様に、葬儀や法要以外でも住職に対して自宅で栽培した野菜や新米を持参したり、仕事の合間に寺院に立ち寄ったりされるとのこと。
まだ入寺してから間もない後藤さんですが、すでに地域住民との信頼関係を築けているように感じました。
地域住民との関係は良好
「お陰様で、現在のところ地域の皆様とは良好な関係を築いております。法要や法話を通じて少しずつですが私の性格や人柄を知ってもらえているようです」
最初は、「どんな住職?」「元警察官なので堅苦しい人ではないか?」と思われていたのではないかと不安だったといいます。ところが、最近では「良いご縁さん(住職)が来てくれて良かった」と言われるほどになったとか。
また、住職が不在だったときは、寺院の清掃などの維持管理は御門徒の仕事でした。現在は住職が維持管理を行っているので、御門徒や役員の負担も減っています。
たとえ自分たちの寺という意識をもっていても、極樂寺の維持・管理は大変だったのではないだろうかと胸の内を語ってくれました。
事実、「ご縁さんが来てくれて、本当に楽になったわ」という声も聞くようになったといいます。
後藤さんの朝の日課は、毎朝6時にお寺の鐘を撞き、午前7時の喚鐘(かんしょう)を鳴らして晨朝(じんじょう・朝の勤行)を勤めること。夕方には、午後6時に喚鐘を鳴らし、夕事勤行を勤めています。
最近では、諸般の事情により朝の鐘撞きをしていない寺院も多いなか、鐘の音色が響き渡ることで、地域住民の安心につながっているのかもしれません。
お寺でコンサートを開催したい

じつは、意外と多趣味の釋峰明さん。剣道や茶道、トランペットの演奏もできるといいます。
「今年の7月19日に永代経をお勤めするのですが、そのときに鈴木君代師を法話の先生としてお招きします。誰もが気楽に集まることができる寺院を目指したいですね」
鈴木師はギターを片手に全国の寺院を回っているシンガーソングライター。堅苦しい法話ではなく、楽しくわかりやすい法話が人気です。
『極樂寺』でも鈴木師のような方を招いたり、法要後の福引き大会などを開催したりして地域住民との親交を深めたいとのこと。
「あとは、研修バス旅行や御門徒の皆様にお茶を点てて出したいです。それから、お金があれば、『極樂杯』と称して、剣道大会を開催したいと考えています。お金は無いのですが」

近年、ほかの寺院では寺ヨガやコンサート、落語などのイベントが開催されていることを受け、『極樂寺』でもさまざまなイベントを企画したいと夢を語ります。
お金は無いという釋峰明さんに、寺の収入事情についても伺いました。
寺や住職の収入事情
寺や住職の収入事情について質問したところ、少し困った顔をされた後
「寺院1ヶ寺で生活するためには、御門徒が約250戸〜300戸必要だと言われております。極樂寺の御門徒は27戸です。ですので、大谷専修学院の同期の僧侶たちからも心配されました」
と笑って答えてくれました。
「昔はわかりませんが、現在は、よほど大きな寺院でない限りお寺1つで生活することは無理だと思います」
後藤さんには二人の娘さんがいらっしゃいます。二人ともすでに成人し、独立しているとのことですが、独立をしていないお子様がいる住職さんの場合は、ほとんどが副業(本山の宗務役員や教師など)をされているそうです。
「私は、昨年還暦を迎えましたので、年金の繰り上げ受給を受け、年金とお布施で細々と生活しております」
と意外な収入事情を明かしてくれました。
後任問題は阿弥陀様にお任せ

生涯を『極樂寺』の住職であり続けると語る後藤さんですが、後任問題については難しい問題のようです。後藤さんの二人の娘さんも、寺の跡を継ぐことはないとのこと。
御門徒の方からも「ご縁さんの後任はどう考えてるんや?」と質問を受けることもあるといいます。
「現在のところ、私が弟子を取って住職として育成するしかないかなと思っていますが、こればかりはご縁ですので、この問題については阿弥陀様にお任せしたいと思います」
真宗大谷派は阿弥陀如来の「すべての衆生を救う」という本願(誓い)に身を委ね、感謝の心で念仏を称える教えです。阿弥陀様が導いてくださることでしょう。
極樂寺の詳細情報
〒526-0243 滋賀県長浜市大路町693




