
『あすてっぷコワーキング』とは、神戸市が運営する“女性向けの無料コワーキングスペース”です。神戸市は「共働き子育てしやすい街ランキング2024」(日本経済新聞社/日経BP)で全国1位を獲得しました。『保育環境の質の高さ』や『学童の拡充』と共に評価されたのが『働きたい女性のためのコワーキングスペース』。地方創生の拠点として今、注目を集めています。2025年4月には石破首相が当施設を訪れ、大きな話題になりました。本記事では『あすてっぷコワーキング』の紹介と、スタッフの鴨谷 香さんにコワーキングの魅力について伺いました。神戸市の“働きたい女性”に必見のスポットです。
一時保育やPC貸出など無料で利用できる
2021年、女性の就職やステップアップのために開設された『あすてっぷコワーキング』。現在、神戸市内3か所(こうべ・学園都市・六甲アイランド)に設置されています。(2025年5月時点)『あすてっぷ』の愛称は「明日へのステップ」から名付けられているのだそうです。

あすてっぷコワーキングHPより引用
『あすてっぷコワーキング』の利用対象者は、神戸市内に在住または在勤の18歳以上の女性。仕事や資格の勉強、就職準備などに利用されています。施設には、授乳室やキッズスペースもあるので、子どもと一緒に来ても大丈夫。男性も子ども連れであれば施設を利用できます。他にも、Wi-FiやPC、個室ブースなど全て無料で利用できるのが魅力です。


仕事や勉強に集中したい方には、無料の一時保育サービスも。予約をすれば1日最大4時間/月8回まで受けられます。一時保育を利用したママからは『子どもを人に預けるのが初めてで緊張したけど、久しぶりに自分の時間をもらって勉強に集中できました!』と嬉しい声が。“子どもを預けて働くこと”に不安を感じている方は、まずは一時保育を利用してみても良いのかもしれません。
コワーキングスペースを“にぎやかな職場”にしたい
『あすてっぷコワーキング』を訪れると、スタッフの“コミュニティマネージャー”が案内をしてくれます。コミュニティマネージャーの鴨谷 香さんに“コワーキングの魅力”について伺いました。

ワーク・ライフチャレンジ〜未来をひらく私たちの働き方〜より引用
「コワーキングスペースとはco(共同の)+work(仕事)+space(場)の意味があります。なので、利用者同士の交流は大歓迎です!そもそも神戸市は自習室を作りたいわけではないんです。せっかく集まっているのだから、利用者同士でコミュニケーションをとって『そんな考え方もあるんだ』とヒントがもらえたり、『一緒に頑張ろうね』と元気がもらえたりする場所にしていきたいなと思っています。目指すのは“にぎやかな職場”ですね」
しかし、作業をしている利用者にどのタイミングで話しかけていいのか、迷う方もいるのではないでしょうか。そこで頼りになるのが“コミュニティマネージャー”の存在。コミュニティマネージャーが率先して、利用者同士のコミュニケーションの輪を広げてくれます。

神戸市より提供
「利用者の方がそれぞれ昼食をとっていたら、『みなさんで一緒に食べませんか』と声をかけたりしています。また、お子さんの年齢や仕事など、共通点がありそうな利用者同士を引き合わせたりしています。もちろん、作業に集中したい方もいるので、無理強いはしません。しかし、利用者同士の交流に最初は乗り気ではなかった方が『思い切って他の方と話をしたら、とても楽しかった』と言ってくれた時は嬉しかったですね」
コミュニティマネージャーは、単にグイグイ話しかければ良いワケではないそうです。大切なのは利用者に近い立場を活かし、その方に必要な対応を考えて関わることだそうです。
「女性には様々なライフステージがあり、抱えている悩みも様々です。積極的にコミュニケーションするけれど、個人的な部分には土足で踏み込まない。そんな絶妙な匙加減を大切にしています」
“モヤモヤ”していたら気軽にキャリア相談も
また、『あすてっぷコワーキング』ではキャリア相談も行っています。コミュニティマネージャーを務める鴨谷さんは、女性のキャリア相談を20年間行っている専門家でもあります。

DAIKEI2032より引用
「キャリア相談は、どの自治体でも行っていると思います。しかし、予約してわざわざ相談に行くのは正直ハードルが高い…と感じる方も多いのではないでしょうか。『あすてっぷコワーキング』の相談室はコワーキングスペースに併設されています。なので、仕事や勉強のついでに『相談してみようかな』と予約される方がいます。“気軽さ”が魅力ですね」
相談の内容は、育休から復帰した時の働き方やキャリアブランクからの再就職、また非正規雇用から正規雇用の転職など多岐にわたります。鴨谷さんが利用者から相談を受ける際、大切にしていることを伺いました。
「相談では“感情”を大切に扱っています。例えば相談者の方が『モヤモヤ』した時、どんな感情だったのか言語化してもらいます。『モヤモヤは悔しい気持ちだった』とわかった方から『自分がこれからどうしたいのか見えてきました!』と言われたことがあります」
相談後は、スッキリして帰る方が多いそうです。モヤモヤの感情はひとりで抱え込まず、専門家に話をしてみてはいかがでしょうか。
「あすてっぷコワーキング」を全国の先進モデルにしたい

神戸市公式noteより引用
2024年度に『あすてっぷコワーキング』を利用された方は約8000人。今後、さらなる発展を遂げていくために“多くの方に認知してもらうことが必要”と鴨谷さんは言います。
「市内3カ所のうちの一つ『あすてっぷコワーキング こうべ』には、毎月20名ほど新しい利用者の方が来られます。育休中の方が3割ほど占めていますが、仕事復帰のタイミングで『あすてっぷコワーキング』の利用も終わってしまうんですよね。なので、これから利用者を増やしていくには個人ではなく、企業への認知度を高めて行けると良いなと思っています。会社で産休・育休の話をした時に、企業側から『あすてっぷコワーキング』を勧めてもらえるのが理想ですね」

セミナーやイベントの告知など、コミュニティマネージャーによるSNSの運用で着実にフォロワーは増えてきているそうです。最後に、「あすてっぷコワーキング」が目指す未来について伺いました。
「今後は、利用者同士が主体的にコミュニティを作っていく仕組みを作りたいと思っています。具体的には、利用者にセミナー講師をしてもらったり、パネルディスカッションに登壇してもらうなどですね。利用者の方に『あすてっぷコワーキング』でステップアップの経験を積んでもらえれば嬉しいです。『あすてっぷコワーキング』が全国の自治体の先進モデルとなり、女性の働き方がもっと自由になってほしいと思います」
おわりに
まだ収入を得ていない女性や、仕事と生活のバランスを試行錯誤している育休中の女性に、無料のコワーキングスペースは非常にありがたい存在だと思います。また、魅力は“無料”だけではありませんでした。『あすてっぷコワーキング』を訪れた方のアンケートで『子どもの話ではなく、自分の話を聞いてもらえて嬉しかった』『他の利用者と話をして視野が広がった』などのコメントが印象的でした。人と交流することで、利用者の方が前向きになっているのを感じました。
ぜひ、神戸市の“働きたい女性”は『あすてっぷコワーキング』を利用してみてはいかがでしょうか。コミュニティの輪が広がり、神戸市だけでなく、全国に『あすてっぷコワーキング』の取り組みが広がりますように。
あすてっぷコワーキング こうべ
〒650-0016 兵庫県神戸市中央区橘通3-4-3
TEL:(078)361-6977
OPEN:9:00〜20:00 月〜土曜(月曜は第1〜第3のみ)
CLOSE:日曜、祝日、第4・第5月曜 年末年始(12/28〜1/4)
利用料:無料
一時保育:月〜土曜 10:00〜12:00/13:00〜15:00
公式HP:https://astep.city.kobe.lg.jp/coworking/
公式instagram:https://www.instagram.com/astep.coworking/