長野県小諸市。観光地で有名な軽井沢から車で約20分。そこは懐古園や、江戸時代から続く小諸藩の城下町の街並みの名残など、詩情を感じさせる高原の町として知られるエリアです。標高約600〜2,000mに広がる町は、厳しい冬の寒さや日中の寒暖差も相まって、美味しい農産物に恵まれ、ワイナリーや温泉なども多く点在しています。
そんな小諸市の町の中心街のメイン通りから1本路地に入った場所に、ひっそりと佇む1軒のビル。外観からして、昔懐かしい昭和レトロ感たっぷりの情緒あふれるビジュアル。年季の入ったビル全体を覆う緑の蔦と、その中に溶け込む「スナック夕子」の看板。これはもう勇気を出してドアをノックするしかありません。
まるで、あの頃にタイムスリップしたかのような外観
スナック。それは、大人の嗜みの場であり、かつて昭和時代、サラリーマンたちが仕事帰りに立ち寄り、カウンターでいつもの馴染み客と一緒にスタッフやママとお酒を楽しみながら、他愛のない会話を繰り広げたもの。いつしか、そんな夜の社交場がひとつ、またひとつと減り、この「スナック夕子」も、そんな日々を繰り返していく中で、消えてしまったお店のひとつでした。
建物全体に蔦が絡み、昭和にタイムスリップしたかのような、時代を感じさせる、この世に2つとないこの外観に惚れ込んだのは、軽井沢町でフラワーショップ『FLOWER FIELD』とカフェ『GAFLO cafe 』を経営しているオーナーの鈴木さん。当時、築50年を超える昭和情緒たっぷりの遺産となっていたビルを買い取り、外観にはほとんど手を付けず、2022年10月、VEGANメニューが楽しめる『FLORO cafe(フロロカフェ)』をオープンさせました。
扉を開けて見ると、左手には生花が。正面奥に広がる「komoro」とデザインされた大きなドアが印象的です。まるで別世界に入り込んでしまったかのような、美しい内装に驚きを隠せません。至る所にドライフラワーやフラワーグッズが展示・販売されています。
時間を忘れてのんびり過ごしたい至福の空間
入口から、スタッフの方に席まで案内してもらうわずかな間にも、数えきれない種類の花々と出会うことができました。広々とした店内は、外観とは打って変わって、今風のオシャレなカフェ空間といった雰囲気に。
ゆるやかに流れるBGMが心地よく、どの席に座ろうか迷ってしまいます。先ほどの「komoro」扉を開けると、テラス席もあり、気分に合わせて選ぶことができます。
フード・ドリンクともに、すべてがヴィーガン対応になっており、牛乳・乳製品、お肉、お魚、卵、バター、蜂蜜、白砂糖を含む、動物性の食材や、動物由来の調味料は一切使われていません。
この日は気温30度を超える暑い日でしたが、空調の効いた店内で、おすすめの「ハーブティー」と、夏限定メニューの「特製 VEGAN レモンパフェ」をいただきました。
VEGANアイスに、アールグレイとレモンジュレの爽やかなフレーバーが、口の中で夏を感じさせてくれました。
あまりの居心地の良さに、時間を忘れてしまいそうになるほど。スタッフの方から、「2階もぜひ見て行ってくださいね」と案内していただいたので、お会計を済ませ、早速外階段へと向かいました。
昭和から令和へ。残したい記憶を現代に生かす
「ほ、本当にここで合っているの・・・?」と、一瞬不安になりましたが、上からスタッフの方が降りてきたため、勇気を出して階段を上りました。すると、そこに広がっていた光景に思わず息を飲みました。
天井一面に広がるドライフラワーは圧巻の一言。2階は物販コーナーになっており、窓からビル全体を覆っていたあの蔦が、美しい借景として利用されていました。
さらに驚いたのは、「スナック夕子」がかつての姿そのままに生き残っていたこと。スナックとしての営業こそしていませんが、古き良き、昭和レトロ感満載のカウンターと、わずか4席のテーブル席が、令和の時代までしっかりとその姿を残し、さらにオシャレなドライフラワーで飾られ、美しさに磨きがかかっていました。
古き良き、ここにしかないものを残し、それを活かしながら、新しいものと融合する。花屋とカフェとスナックが見事にひとつになった、こんなにも居心地の良い空間は、唯一無二。
かつてどこにでもあった場所が、今ではここにしかない。
そんな時代の流れを優しく受け止め、幸せな気持ちになれる、不思議な「FLORO cafe(フロロカフェ)」。あなたもぜひ一度、そのドアをノックしてみませんか。
お店の情報
アクセス:〒384-0025 長野県小諸市相生町2-2-2
電話番号:0267-46-8719
営業時間:平日11:00~17:30、土日祝10:00~18:00
定休日:火曜日
駐車場:なし(近隣に多数コインパーキングあり)