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人  |    2026.04.09

お酒と本を愛する人が集う店。埼玉県川口市「本と豆料理 豆千」|後編【店主編】

「本と豆料理 豆千」(以下、豆千)は、お酒を飲みながら読書を楽しめる店です。前半の記事では、その魅力について紹介しました。

後半の記事は、会社員とのダブルワークを続ける店主、笠井隆太さんの物語をお届けします。

前編はこちら

お酒と本を愛する人が集う店。埼玉県川口市「本と豆料理 豆千」|前編【お店編】

20年の時を超え、開店を決意

笠井さんは、都心にあるオフィスに会社員として勤務しています。大学卒業と同時に入社し、在籍期間は約20年。会社でのポジションは、人材育成と業務拡大に関わる管理職です。

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大学時代、創作ゼミでエッセイやショートショートを書いていた笠井さんは、本に携わる職業に就きたいと願っていました。しかし、就職氷河期だったこともあり、そのご縁には巡り合えなかったそうです。

時が流れた2023年、笠井さんは西日暮里にあるシェア型書店(※)で、棚主として本を売り始めました。彼はそこで「独立して本屋を開いた棚主がいる」と聞き、いずれ店を出したいと考えるようになります。

※シェア型書店:店舗内の本棚を区切り、棚主と呼ばれる個人オーナーに貸し出すスタイルの書店。棚主は自分の棚で、自由に本を販売できる

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「最初は、定年退職後に店を始められたらいいな、という小さな思いでした。でも、シェア型書店の運営の方が『やると決めたら、1年以内に開店するつもりで始めないと実現できないよ』と背中を押してくださって。そこで、改めて自分の状況を見つめてみたんです」

人生を振り返ってみると、仕事や悩みごとが完全に落ち着いた時期など、これまで一度もなかった。そう気づいた笠井さんは、それなら今すぐに始めようと腹をくくり、開店準備に取り掛かりました。

夢の舞台との出会い

開店に向けて動き出した笠井さんは、川口市主催の起業家向けセミナーに参加し、店の事業計画を立案します。

そこで実感したのは、店の利益だけで生活していくことの現実的な厳しさ。彼はまず、副業として店を始め、一定のお客さんがついてから独立する道を選びました。

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そして、笠井さんはほどなく川口市内に良い物件を見つけます。もともと居酒屋だった古い店舗で、彼好みのカウンターがあり、賃料もそれほど高くありません。しかし契約当日、建物内の老朽化した水道管が破裂するアクシデントが起き、借りられなくなってしまいました。

内装デザインの話も同時進行で進んでいたため、目の前が真っ暗になったと話す笠井さん。しかし「こんなところで負けてはいられない」と立ち上がり、現在の店舗に巡り合ったそうです。

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「ここは新築ですし、駅から歩いてくる人も多いので、店をやるには良いですね。近所の酒屋さんと知り合えたり、商店街の方が来てくださったりして、地元とのつながりが広がっているのも嬉しいです。今はこの場所で良かったと思っています」

ピンチをチャンスに変えた笠井さんは、その後も開店に向けて動き続け、2024年11月に豆千をオープン。シェア型書店で決意したとおり、準備開始から約1年での開店を実現しました。

笠井さんにとっての「本と豆料理 豆千」

豆千には読書家や近所の方、クリエイターなど大勢の常連客が集まります。笠井さんは、豆千でお客さんを迎えるとき、自室に友人を招くような気分になるそうです。

「そう感じるのは、僕が気に入ったものだけを店に集めたからだと思います。本のラインナップ、お酒の銘柄、器、豆料理…。だからこそ、好きなビールを冷蔵庫いっぱいに冷やして、友達を待っている感覚になるんでしょうね」

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しかし、店の経営は楽しい時間ばかりではありません。会社の仕事を終えて下ごしらえをしたり、確定申告に苦労したりと、大変だと感じる場面も多いそうです。そんなとき、笠井さんは会社員の仕事で培った「物事を整理して進める」というスキルを活かして乗り越えるといいます。

「僕は20年間の社会経験の中で、混乱した状況を整理する役割を何度も担ってきました。だから現状を確認して、対策や手順を考えるのが得意なんです。それが店の経営にも役立っていますね」

笠井さんにとって、豆千は仕事でもあり、最高の道楽でもあります。お酒を飲みつつ、好きなものだけを集めた店に立つ週末は、ダブルワークの原動力。彼は「店に集中する時間があるからこそ、どちらの仕事にも全力投球できる」と嬉しそうに話します。

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最後に、豆千が愛される存在になった現在の思いを伺いました。

「ようやく探していた場所にたどり着けた、と実感しています。人とのつながりも広がりましたし、自分の世界に没頭する時間も持てるようになりました。店を始めたおかげで、平日の仕事にも新たな視点が加わり、モチベーションも上がっています。体が疲れる日もありますが、充実した日々ですね」

いずれ定年退職を迎えたら、豆千を本業として営んでいくと目を輝かせる笠井さん。本とお酒、そして豆料理を楽しめる店は、笠井さんのやさしさとこだわりに満ちています。

「本と豆料理 豆千」

住所:川口市本町3丁目3−16 オーパスホームズ川口 101

営業日:金曜・土曜

営業時間:不定期(X・noteでご確認ください)

X:x.com/beans_1000
note:https://note.com/mamesen

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この記事を書いた人

さわきゆり

人見知りをまったくしないフリーライター。 好きなものはバイクとサッカー観戦、嫌いなものは庭の雑草とオバケ(ただし霊感はまるでない)。 座右の銘は「人に歴史あり」 ポートフォリオ: https://sawakifolio.studio.site/

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