山梨県北杜市小淵沢町、田んぼと雑木林のあいだのあぜ道の先に「レトロ喫茶 夕日亭」はあります。流れるのは昭和歌謡だけ。10円の駄菓子に、自由に読める1970年代の少女漫画誌。2026年7月に開いたばかりの、昭和をまるごと切り取ってきたような喫茶店です。
レトロ喫茶 夕日亭
中央道小淵沢ICを降りて、車で3分。
八ヶ岳の南麓、北杜市小淵沢町。高原リゾートのイメージが強い土地ですが、県道11号から少し入ると、そこはのどかな田園地帯です。車一台がやっと通れる細いあぜ道。片側は青々とした田んぼ、反対側は雑木林と畑。カーナビを頼りに走りながら「本当にこの先にお店があるの?」と不安になったころ、青地に赤文字の「駄菓子」ののぼりが見えてきました。

田んぼと雑木林のあいだに、ぽつんと建つ平屋。2026年7月にオープンしたばかりの「レトロ喫茶 夕日亭」です。ドアを開けたとたん、昭和歌謡が流れてきて、懐かしさに思わず笑みがこぼれました。

ドアを開けたら、昭和歌謡

店内は、純喫茶とスナックの中間のような雰囲気です。深い赤のソファ席、木目の壁、天井から下がる三角旗。窓辺には黒電話。
そして何より、BGMです。
流れていたのは「ルビーの指環」。次に「ドリフのズンドコ節」、そして「め組のひと」。徹底して昭和歌謡だけがかかります。誰もが知る大ヒット曲ばかりではなく、少し渋い曲が混ざるのがいい。この選曲が、店の空気にぴたりと合っていました。
平日の午後、東京から来たという女性の二人組が、楽しそうにおしゃべりをしていました。ブラウン管テレビ、丸型の郵便ポスト、ホーロー看板。目に入るもの全部が、懐かしいような、新しいような。


駄菓子が10円。「原価、大丈夫ですか?」
店内には「夕日商店」と名づけられた駄菓子屋コーナーがあります。トタン屋根の小屋が、そのまま店の中に建っているような造りです。
値札を見て、二度見しました。10円、20円。思わず店主に「安すぎませんか?」と聞いてみると、こんな答えが返ってきました。
「昭和の雰囲気を壊したくなくて。できるだけ当時の値段に近づけて出しています」
こんなところにも、店主のこだわりとやさしさを垣間見ました。
並んでいるのはさくら大根、きなこ棒。子どものころ、駄菓子屋の店先でさんざん迷って選んだ、あのラインナップそのものでした。

昔の雑誌は自由に読める。おもちゃは買える
店の一角には、マガジンコーナーがあります。1970年代の「りぼん」や「マーガレット」、少年マガジンの表紙は山口百恵さん。すべて自由に手に取って読めます。

入り口のすぐ横には、コレクションボックス。昭和の縁日やおもちゃ屋の店先に並んでいたようなグッズが、ぎっしり陳列されています。しかもこれ、眺めるだけでなく実際に買えます。

壁を彩るポスターや看板も、映画、鉄道、家電、化粧品。懐かしいブラウン管のカラーテレビのポスターの前で足を止めると、その隣には、かなりの年代物と見られる石けんの広告。書かれている石けんの値段を見ると「1個10セン」——10銭です。一体どこで見つけてきたのだろう。

店主に聞くと、昭和好きが高じてグッズを集めていたら、お店を開いてしまったのだそうです。
昭和を知らない世代も、ここへ来る
小淵沢ICが近いこともあり、八ヶ岳の高原リゾートを目当てに来た人が、InstagramやTikTokで見つけて立ち寄ってくれることが多いといいます。
面白いのは、お客さんの年齢層です。昭和を知らない若いカップルもいれば、昭和30年代生まれのお客さんもいる。同じ空間で、片方は「新しい」と言い、片方は「懐かしい」と言う。そういう場所になっているようです。

ピザトースト500円。おすすめはメロンクリームソーダ
注文は、お会計カウンターで先に伝えて支払いを済ませ、席で待つスタイルです。

頼んだのは、ピザトースト(500円)とバニラあんみつ(700円)。
ピザトーストは、青い花柄の洋皿で登場。厚切りの食パンに、ケチャップととろけたチーズ、玉ねぎとピーマンとソーセージ。あの正しいピザトーストです。

あんみつは、ガラスの器に寒天と白玉、あんこと三色求肥、その上にバニラアイス。緑茶が添えられ、お盆で運ばれてきました。

どちらも、きちんとおいしい。そして、盛りがいい。ほかにカレーライス(900円)、ヤンニョムチキン(700円)、プリン(400円)など、価格はすべて税込みです。
……メロンクリームソーダ(600円)を頼むべきでした。メニューをよく見たら、「おすすめ!」の文字。ベビーカステラ(9個500円)にも、同じ印がついています。次に来るときの宿題ができました。

まとめ|時計だけが、止まっている
昭和歌謡を聞きながら、同じく昭和生まれの友人と話していると、ときが止まったような錯覚をおぼえました。10円の駄菓子も、自由に読める「りぼん」も、原価や採算とは別のところにある、店主のこだわりの結晶です。
八ヶ岳へのドライブのついでに、ほんの3分。次はメロンクリームソーダとベビーカステラを頼みに、また行きます。
レトロ喫茶 夕日亭の基本情報
所在地
〒408-0044
山梨県北杜市小淵沢町5643-1
電話番号
0551-45-7528
営業時間
11:00〜19:00
定休日
火曜日
席数
18席(テーブル16席・カウンター2席)
駐車場
あり(8台)
車でのアクセス
中央自動車道・小淵沢ICから約3分
公共交通機関でのアクセス
最寄り駅はJR中央本線・小淵沢駅(タクシー利用)
※北杜市は車移動が基本のエリアです
公式Instagram(臨時休業などの最新情報はこちら)
https://www.instagram.com/retro_yuuhitei/
そのほか
カード・電子決済での支払い可/お子様連れ歓迎/店内に駄菓子・おもちゃの販売コーナー「夕日商店」あり




