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フード  |    2026.09.06

駄菓子は10円、BGMは昭和歌謡|小淵沢のあぜ道の先に、時が止まった喫茶店【山梨県北杜市】

山梨県北杜市小淵沢町、田んぼと雑木林のあいだのあぜ道の先に「レトロ喫茶 夕日亭」はあります。流れるのは昭和歌謡だけ。10円の駄菓子に、自由に読める1970年代の少女漫画誌。2026年7月に開いたばかりの、昭和をまるごと切り取ってきたような喫茶店です。

レトロ喫茶 夕日亭

中央道小淵沢ICを降りて、車で3分。

八ヶ岳の南麓、北杜市小淵沢町。高原リゾートのイメージが強い土地ですが、県道11号から少し入ると、そこはのどかな田園地帯です。車一台がやっと通れる細いあぜ道。片側は青々とした田んぼ、反対側は雑木林と畑。カーナビを頼りに走りながら「本当にこの先にお店があるの?」と不安になったころ、青地に赤文字の「駄菓子」ののぼりが見えてきました。

県道から入る細い道。稲の緑のむこうに「駄菓子」ののぼりが立つ

田んぼと雑木林のあいだに、ぽつんと建つ平屋。2026年7月にオープンしたばかりの「レトロ喫茶 夕日亭」です。ドアを開けたとたん、昭和歌謡が流れてきて、懐かしさに思わず笑みがこぼれました。

田んぼと雑木林にはさまれて建つ、平屋の「レトロ喫茶 夕日亭」。目印は「駄菓子」ののぼり

ドアを開けたら、昭和歌謡

深い赤のソファ席が並ぶ店内。壁一面にレトロな看板とポスター、奥に駄菓子屋コーナーとお会計カウンターが見える

店内は、純喫茶とスナックの中間のような雰囲気です。深い赤のソファ席、木目の壁、天井から下がる三角旗。窓辺には黒電話。

そして何より、BGMです。

流れていたのは「ルビーの指環」。次に「ドリフのズンドコ節」、そして「め組のひと」。徹底して昭和歌謡だけがかかります。誰もが知る大ヒット曲ばかりではなく、少し渋い曲が混ざるのがいい。この選曲が、店の空気にぴたりと合っていました。

平日の午後、東京から来たという女性の二人組が、楽しそうにおしゃべりをしていました。ブラウン管テレビ、丸型の郵便ポスト、ホーロー看板。目に入るもの全部が、懐かしいような、新しいような。

卓上にはブラウン管テレビと、昔の喫茶店やレストランでよく見かけた、あの卓上の占い器
店内に置かれた丸型の郵便ポスト

駄菓子が10円。「原価、大丈夫ですか?」

店内には「夕日商店」と名づけられた駄菓子屋コーナーがあります。トタン屋根の小屋が、そのまま店の中に建っているような造りです。

値札を見て、二度見しました。10円、20円。思わず店主に「安すぎませんか?」と聞いてみると、こんな答えが返ってきました。

「昭和の雰囲気を壊したくなくて。できるだけ当時の値段に近づけて出しています」

こんなところにも、店主のこだわりとやさしさを垣間見ました。

並んでいるのはさくら大根、きなこ棒。子どものころ、駄菓子屋の店先でさんざん迷って選んだ、あのラインナップそのものでした。

店内の駄菓子屋コーナー「夕日商店」。たばこの看板も、赤い公衆電話も、そのまま昭和。お菓子を選ぶ時間がいちばん長くなる

昔の雑誌は自由に読める。おもちゃは買える

店の一角には、マガジンコーナーがあります。1970年代の「りぼん」や「マーガレット」、少年マガジンの表紙は山口百恵さん。すべて自由に手に取って読めます。

自由に読めるマガジンコーナー。1970年代のものを中心に、漫画誌や週刊誌がぎっしり。上の棚には古い紙幣を集めた額と、キャラクターもののうちわ

入り口のすぐ横には、コレクションボックス。昭和の縁日やおもちゃ屋の店先に並んでいたようなグッズが、ぎっしり陳列されています。しかもこれ、眺めるだけでなく実際に買えます。

入り口横のコレクションボックス。ひとつずつ値札がついていて、実際に購入できる

壁を彩るポスターや看板も、映画、鉄道、家電、化粧品。懐かしいブラウン管のカラーテレビのポスターの前で足を止めると、その隣には、かなりの年代物と見られる石けんの広告。書かれている石けんの値段を見ると「1個10セン」——10銭です。一体どこで見つけてきたのだろう。

カラーテレビと化粧石けんの広告。左下に「1個10セン」の文字が読める

店主に聞くと、昭和好きが高じてグッズを集めていたら、お店を開いてしまったのだそうです。

昭和を知らない世代も、ここへ来る

小淵沢ICが近いこともあり、八ヶ岳の高原リゾートを目当てに来た人が、InstagramやTikTokで見つけて立ち寄ってくれることが多いといいます。

面白いのは、お客さんの年齢層です。昭和を知らない若いカップルもいれば、昭和30年代生まれのお客さんもいる。同じ空間で、片方は「新しい」と言い、片方は「懐かしい」と言う。そういう場所になっているようです。

トタン屋根に「営業中」の札。ベビーカステラの幟も立つ

ピザトースト500円。おすすめはメロンクリームソーダ

注文は、お会計カウンターで先に伝えて支払いを済ませ、席で待つスタイルです。

注文と支払いは、このお会計カウンターで。レトロな雰囲気とは裏腹に、支払いは電子決済もOK

頼んだのは、ピザトースト(500円)とバニラあんみつ(700円)。

ピザトーストは、青い花柄の洋皿で登場。厚切りの食パンに、ケチャップととろけたチーズ、玉ねぎとピーマンとソーセージ。あの正しいピザトーストです。

ピザトースト500円。厚切りの食パンが、四つに切り分けられて出てくる

あんみつは、ガラスの器に寒天と白玉、あんこと三色求肥、その上にバニラアイス。緑茶が添えられ、お盆で運ばれてきました。

バニラあんみつ700円。寒天と白玉、三色求肥の上に、バニラアイスがのる

どちらも、きちんとおいしい。そして、盛りがいい。ほかにカレーライス(900円)、ヤンニョムチキン(700円)、プリン(400円)など、価格はすべて税込みです。

……メロンクリームソーダ(600円)を頼むべきでした。メニューをよく見たら、「おすすめ!」の文字。ベビーカステラ(9個500円)にも、同じ印がついています。次に来るときの宿題ができました。

メニュー表。「おすすめ!」の印がついているのは、メロンクリームソーダ、プリンとベビーカステラ、そして韓国屋台セット

まとめ|時計だけが、止まっている

昭和歌謡を聞きながら、同じく昭和生まれの友人と話していると、ときが止まったような錯覚をおぼえました。10円の駄菓子も、自由に読める「りぼん」も、原価や採算とは別のところにある、店主のこだわりの結晶です。

八ヶ岳へのドライブのついでに、ほんの3分。次はメロンクリームソーダとベビーカステラを頼みに、また行きます。

レトロ喫茶 夕日亭の基本情報

所在地
〒408-0044
山梨県北杜市小淵沢町5643-1

電話番号
0551-45-7528

営業時間
11:00〜19:00

定休日
火曜日

席数
18席(テーブル16席・カウンター2席)

駐車場
あり(8台)

車でのアクセス
中央自動車道・小淵沢ICから約3分

公共交通機関でのアクセス
最寄り駅はJR中央本線・小淵沢駅(タクシー利用)
※北杜市は車移動が基本のエリアです

公式Instagram(臨時休業などの最新情報はこちら)
https://www.instagram.com/retro_yuuhitei/

そのほか
カード・電子決済での支払い可/お子様連れ歓迎/店内に駄菓子・おもちゃの販売コーナー「夕日商店」あり

あわせて読みたい(夕日亭から車で20分以内)

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この記事を書いた人

宮沢 まみ

山梨県甲府市在住の取材ライター。 地元・山梨を拠点に、観光地や地域に根ざすお店を訪ね、土地の物語や人の想いを丁寧に取材・執筆しています。海外生活の経験も活かし、日本各地の観光と暮らしの魅力を伝えることを目指しています。

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