「人よりも、商品を見てほしいんです」
そう話すのは、愛媛県松山市で2026年8月に「R-Küche Delikatessen(アールキュッヒエ デリカテッセン)」(以下、アルキュー)をオープンした店主。
自分自身を前面に出してお店を宣伝するのではなく、「これがおいしいから食べてほしい」という気持ちを大切にしています。
そんな店主は、もともとキッチンカーからスタートしました。店舗を構えながら、今後もキッチンカーでの営業を続けるそうです。
今回は、現在のお店を始めるまでの歩みや商品のこだわり、店主が大切にしている「楽しく働く」という考え方について伺いました。
パン職人として約18年。豊富な経験を土台にスタート

店主が食品業界に携わるようになった背景には、製菓・製パンの専門的な学びがあります。
専門学校では製菓製パンコースで学び、製菓衛生師の資格も取得。その後、パン業界で約18年間働いてきました。
松山市内のパン店などで経験を積み、パンづくりの技術だけではなく、商品を届けることの楽しさも知っていったそうです。
しかし、長く続けてきたパンの仕事を離れた時期もありました。その後、さまざまな仕事を経験。
そんなある日、ママ友から「パン屋さんやらんの?」と声をかけられたことが転機になります。
「じゃあ自分でやったらいい」
家族と相談する中で出てきたのが、キッチンカーという選択肢でした。
「お店を持つ」のではなくまずはキッチンカーから

最初から大きなお店を構えようと考えていたわけではありません。まずはキッチンカーでやってみるという、軽い気持ちからスタートしました。
「自分が楽しくお金を稼げたらいいかなって。楽しいの先に、お金がついてきたら一番いいでしょ」
この言葉からも、店主にとって仕事は「我慢して続けるもの」ではなく、「自分自身が楽しめるもの」であることが分かります。
2020年にキッチンカーを始めてから、少しずつファンが増えていきました。
SNSを自分で研究。開業前から多くの人に知られる存在に

集客で大きな力になったのがInstagramです。店主自身が「自分だったらどうするだろう」と考えながら、SNSを活用していきました。
例えば「愛媛ランチ」などのハッシュタグから投稿を探し、気になった人の投稿に「いいね」をする。一見すると地道な作業ですが、そこからプロフィールを見てもらい、さらにお店のことを知ってもらう。
そんな行動を積み重ねていきました。
その結果、キッチンカーの開業前には、フォロワーが1,000人を超えるほどに。
「SNSの威力ってすごいです」
店主自身が試行錯誤して見つけた方法だからこそ、SNSへの向き合い方にも実践的な考えが表れています。
人気が出た一方で、最初の1~2年は「楽しい」だけではなかった

順調にファンを増やしていったように見えますが、キッチンカーを始めて最初の1~2年は、かなり大変だったといいます。予想以上に多くのお客さんが訪れ、うれしさと同時に疲れ果てる日々。
それでも続けられたのは、根底に「楽しい」という気持ちがあったからでした。
「必死でやってるっていう感じがしない」
そう話す店主ですが、実際には商品づくりやSNS、接客など、さまざまなことを自分で考えながら積み重ねています。ただ、それを「努力している」というより、「好きなことを楽しんでいる」と捉えているのかもしれません。
店舗を構えた理由とは

新店舗を構えた理由を聞くと、意外な答えが返ってきました。
「キッチンカーが暑いから」
夏は暑く、冬は寒い。キッチンカーでの営業を続けるなかで、身体への負担を感じるようになったことが店舗化の大きな理由でした。
店舗では、ドリンクを提供したり新しい商品を作ったりと、できることも増えます。
キッチンカーで培った経験を生かしながら、次のステージへ。現在は店舗を中心に営業しつつ、キッチンカーも継続しています。
「人」ではなく「商品」を見てほしい

店主には、もう一つ大切にしている考えがあります。それが、「商品を見てほしい」ということ。
お店の人に会うことを目的にするのではなく、「この商品がおいしいから来た」と言ってもらえるほうがうれしい。
季節の商品を楽しみにしてくれたり、「次はいつ出るの?」と聞いてくれたり。そんな声こそが、店主にとってうれしい瞬間です。
もちろん、お客さんには気持ちよく過ごしてもらいたい。
長年の飲食店での経験もあり、丁寧な接客は当たり前のこととして大切にしています。
しかし、あくまで主役は商品。「おいしいものを共有したい」というシンプルな思いが、店づくりの根底にあります。
人気商品の台湾カステラは季節限定の味も

アルキューの看板商品の一つが台湾カステラ。
ふんわりとした食感を楽しめる人気商品で、店頭だけでなく自動販売機にも並んでいます。
店主によると、台湾カステラはお店の商品の中でも特に人気が高いそう。季節によってフレーバーが変わるのも楽しみの一つです。
この日は「レモン」をいただきました。ひと口食べると、台湾カステラならではのふんわりとした生地に、レモンの爽やかな風味が重なります。甘さだけで終わらず、レモンの酸味がアクセントになるため、後味も軽やか。
暑い時期にも食べやすい、爽やかな味わいです。
ココナッツラテは「ハマっている味」

続いていただいたのが、店主がお気に入りだという「ココナッツラテ」。コーヒーにココナッツミルクなどを組み合わせたドリンクです。
店主がタイを好きになったことも、このドリンクが生まれた背景の一つ。
タイとのつながりを持つ中でココナッツラテに興味を持ち、実際に試作。

「めっちゃおいしい」と感じたことから、商品として提供するようになったそうです。
実際に飲んでみると、ココナッツの風味が感じられながら、まろやかさも印象的。今回いただいたものは、優しい甘さがあり、一般的なラテとはまた違った味わいです。
店主から「よく混ぜるといい」と教えてもらい、カップの中をしっかり混ぜてからいただきました。
コーヒーの苦味だけを強く感じるタイプではなく、ココナッツミルクによるまろやかさとのバランスが最高でした。
実はタイとのつながりから生まれたドリンク
ココナッツラテの背景には、店主のタイ好きもあります。タイへ旅行するうちに、現地の食や文化に興味を持つようになったそうです。
取材時にはタイでウェルネスに関わる施設を立ち上げる計画も進めており、現地とのつながりが少しずつ広がっています。
その中で知り合った人たちとの交流から、ココナッツラテのアイデアも生まれました。
「好きなものを発信していると、同じものが好きな人とつながれる」店主のSNSを通して、新たな人とのつながりや、仕事の可能性が生まれています。
これからも楽しんでいく

キッチンカー、店舗、そして新しい商品。
形を変えながらも、店主が大切にしているのは「楽しいこと」。
「楽しくないと無理やと思う」その言葉の通り、自分が楽しめることを大切にしながら、少しずつアルキューの可能性を広げています。
基本情報
住所:〒799-2468 愛媛県松山市小川517
定休日:月曜、火曜※祝日は営業
営業時間:
水・木・金:7:00〜14:00
土・日・祝:10:30〜16:00
木曜日のお惣菜営業時間(16:30〜19:30)
SNS:Instagram
※掲載情報は2026年9月取材時点のものです。最新の情報は、公式SNS等でご確認をお願いいたします。



