馬の上でアクロバティックな技を披露する姿を、ネットやテレビなどで見たことがある方もいるのではないでしょうか。そんな「駈馬神事(かけうましんじ)」が毎年行われているのが、京都市伏見区に鎮座する「藤森神社」です。
境内には立派な「神馬」の銅像もあり、古くから馬とのゆかりが深い神社として知られています。また、「菖蒲(しょうぶ)の節句」発祥の地ともいわれ、「菖蒲」が「勝負」に通じることから、競馬関係者やレースファンからは「勝運と馬の神様」としても信仰されています。
毎年11月には、競馬関係者や馬を愛する人々が集う「駪駪祭(しんしんさい)」も行われるなど、現在も馬や競馬とのつながりが受け継がれています。
私が訪れたのは、紫陽花が咲く季節。馬との関わりだけでなく、長い歴史を持つ神社としても以前から気になっていた場所でした。
今回は、そんな馬とのゆかりをはじめ、長い歴史とさまざまな文化が受け継がれている藤森神社を、実際に参拝した体験とともにご紹介します。

「馬九いく」に願いを込めて。縁起の良い絵馬
境内に入ってまず目を引いたのが、大きな絵馬に描かれた「馬九いく(うまくいく)」の文字。

9頭の馬が力強く駆ける姿が描かれており、「何事も万事うまくいく」という縁起の良い意味が込められています。
藤森神社は古くから「馬の神様」として親しまれている神社ですが、今年はちょうど干支である午年。
そんな節目の年に、この絵馬に出会えたことが印象に残りました。
「馬九いく」という言葉に背中を押してもらうような、明るく前向きな気持ちで境内を歩き始めます。
1200年以上続く「駈馬神事」と、馬との深い関わり
藤森神社と馬とのつながりを語るうえで欠かせないのが、毎年5月に行われる「駈馬神事(かけうましんじ)」です。
走る馬の上で、乗子(のりこ)がさまざまな技を披露する伝統行事で、1200年以上の歴史があるとされています。
実際に境内を歩いてみると、神馬の銅像など、馬との関わりを感じられるものがいくつも目に入ります。
さらに、毎年11月には「駪駪祭(しんしんさい)」も行われています。
競馬関係者や馬を愛する人々が集う祭典で、古くから続く藤森神社と馬とのつながりが、現在にも受け継がれていることを感じられる行事です。
私自身、以前は競馬を見ることが好きだった時期もあり、JRAの福永祐一騎手を応援していたことがあります。
そのため、今回初めて藤森神社を訪れ、
「競馬が好きだった頃に、この神社のことを知っていたら、もっと早く来てみたかったな」
と、弟と話しながら境内を歩きました。
けれど、実際に訪れてみると、競馬だけではなく、長い年月をかけて受け継がれてきた神社の歴史や信仰にも興味が広がっていきました。
地元の人々に愛され続ける名水「不二の水」

参拝後、境内を散策していると、右手奥に大きな岩からこんこんと水が湧き出る場所がありました。
案内板によると、これは「不二の水(ふじのみず)」と呼ばれる御神水。
地下約100メートルから湧き出る天然水で、「二つとない素晴らしい水」という意味からその名がついたそうです。
武運長久や勝運、病気平癒などの水として、古くから信仰されています。
私が「これなんやろ?」と不思議そうに眺めていると、大きなペットボトルを持って水を汲みに来ていたご近所のおじさまが、笑顔で声をかけてくれました。
「姉ちゃん!見てるだけじゃこのおいしさわからんぞ!飲んでみ!」
そう言って、快く場所を譲ってくださったのです。
差し出されたお水を一口いただくと、ひんやりと冷たく、驚くほどまろやか。
地元の方が日常的に汲みに訪れる理由が、その一口で分かったような気がしました。
神社を訪れたことで、そこで暮らす人と少し言葉を交わす。こうした偶然の出会いも、実際にその土地を歩いてみるからこそ得られる旅の楽しみだと感じました。
「あじさいの宮」で出会った、ちょっぴり悔しい思い出
藤森神社は、京都でも「あじさいの宮」として知られています。
手水舎には色鮮やかな紫陽花を浮かべた「花手水」があり、境内にも美しい紫陽花が咲いていました。

さらに境内には2か所の紫陽花苑があり、約3,500株もの紫陽花を楽しむことができます。
ところが、この日ちょうど紫陽花苑の公開初日だったことに、私たちは気づいていませんでした。
参拝中はそのまま境内を巡り、宝物殿を拝観したあと、次の場所へ。
後から公開初日だったことを知り、「えっ、入れたやん……!!」と、なんとも悔しい結果になりました。
それでも、花手水や境内に咲く鮮やかなピンクの紫陽花を見ることができ、その美しさを十分に楽しむことができました。
次回訪れるときには、今度こそ紫陽花苑へ。
今回の「行きそびれ」も、次に訪れる楽しみとして残しておきたいと思います。
また、境内には、藤森神社に伝わる社宝を展示する宝物殿もあります。
館内には、重要文化財に指定されている「紫絲威大鎧」をはじめ、火縄銃や大筒など、さまざまな社宝が展示されています。
また、馬の神様として信仰される藤森神社ならではの展示として、日本各地の馬の郷土玩具や、世界各地の馬のミニチュアなども見ることができます。
さらに、近年奉納された太刀「鶴丸」の写し刀や、「一期一振」の写し刀も展示されています。
実際に館内を歩いてみると、馬だけではなく、武具や刀剣、郷土玩具など、さまざまな角度から藤森神社の歴史や文化に触れられる場所だと感じました。
馬をきっかけに、歴史や人とのつながりに出会える藤森神社
馬とのゆかりや勝運の神様として知られている藤森神社。
今回訪れてみると、1200年以上の歴史を持つ駈馬神事や駪駪祭など、馬と人とのつながりだけでなく、不二の水や紫陽花、宝物殿など、さまざまな魅力があることに気づきました。
なかでも印象に残ったのは、不二の水で出会った地元の方との会話です。
「姉ちゃん、飲んでみ!」
と気さくに声をかけていただいたことは、今回の参拝で出会えた温かな思い出の一つになりました。
そして、かつて競馬が好きだった私にとっては、馬とのゆかりが深い藤森神社を訪れたことも、少し特別な経験でした。
「もっと早く知っていたかった」と思う一方で、今だからこそ、馬だけではなく、その背景にある歴史や文化、地域の人々とのつながりにも目を向けることができたように思います。
今回は紫陽花苑に入れなかったという、まさかのリベンジ案件も残りましたが、それもまた次に訪れる楽しみ。
京都を訪れた際には、馬や競馬をきっかけに訪れるのはもちろん、長い歴史を持つ神社の文化や、地域に受け継がれてきた人々の祈りにも目を向けながら、境内をゆっくり歩いてみてはいかがでしょうか。

藤森神社
住所:京都府京都市伏見区深草鳥居崎町609
ご祈祷受付時間:9時~16時
その他受付時間:9時~17時
アクセス:
〈京都駅からお越しの方〉
JR「藤森駅」下車 徒歩5分
〈淀屋橋・祇園四条方面からお越しの方〉
京阪「墨染駅」下車 徒歩7分
〈近鉄線竹田駅からお越しの方〉
京都市営バス 南8/南6「藤森神社前」下車すぐ


