
2026年11月28日、神奈川県の横須賀スタジアムで開催される「ハンズホールディングスCUP2026 全国大会」。この大会に、兵庫県神戸市から「神戸シャインスターズ」が出場します。
活動を始めて30年以上の歴史を持つチームには、現在、19歳から60代後半まで約30人が在籍。年齢もスキルも幅広く、集まってくる目的もさまざまな選手たちが、月2回の練習に励んでいます。
チームの立ち上げから携わってきた角正人監督に、これまでの歩みや選手との向き合い方、全国大会への思いを伺いました。
年齢も腕前もさまざま。それぞれが楽しめるチームに
チームの活動が始まったのは、1994年の秋でした。その当時、神戸で知的障がいのある人たちの余暇活動を広げようと活動していた「共に歩む会」が出発点です。
その会の中心的存在だったのが、角さんが働く福祉施設の先輩職員。角さんは、知的障がいのある子どもたちが通う施設の児童指導員です。趣味で草野球もやっていたので、うってつけの人物だったのでしょう。
その先輩職員から「ソフトボールチームをつくりたい。手伝ってくれへんか」と誘われ、その方と初代監督(現在はコーチ)、現監督の角さんの3人でチームを始めることになりました。
「神戸シャインスターズ」の名前がついたのは、つい2〜3年前のこと。「もうちょっとソフトボールチームらしい名前をつけようよ」という声が上がったのをきっかけに、みんなで話し合って付けた名前です。
活動はA・Bの2チームに分かれて行っています。Aチームは上級者チーム、Bチームは初級者チームです。練習では同じグラウンドを前半はBチーム、後半はAチームが使います。
2チーム体制の理由は、安全と楽しさの2つの面からです。たとえば、上級者の速い打球が初心者のところへ飛んだりすると危険なため、けがを防ぐというのが1つ。もう1つは、それぞれのレベルで楽しめるようにするためです。
選手の力を引き出す、監督の難しさ

角監督自身が学生時代に打ち込んだのはバレーボール。草野球をするようになったのは、社会人になってからのことです。
「野球やソフトボールに関しては素人」だといい、指導をするうえで重きを置いているのは、技術的なことではなく、精神的なサポートです。
特に試合では、チーム全体の雰囲気が前を向いているか、これから打席に入る選手の精神状態はどうか、どう声をかければ力を発揮できるのかを考えながら、選手たちの様子を注意深く見守っています。
印象深く覚えているのは、十数年前の予選の決勝。最終回に1点か2点差で負けていた2アウトの場面で、逆転のチャンスが訪れました。次の打者が打てば逆転勝ち、打てなければ負けです。
そのとき、打席に入ろうとした選手が、突然「ブワーっと」泣き出したのだそう。
角監督も一瞬、なぜ泣いているのかわからず戸惑ったといいます。
しかし、すぐにピンときました。その選手とは付き合いが長く、性格がよくわかっていたので「これはテンションが上がりすぎているんだな」と。そこで、彼に近づいて笑いながら冗談を言いました。その声掛けが、気持ちを落ち着かせるのに一番だと思ったからです。
監督の声掛けは功を奏し、選手は力みなく打席に臨み、見事に試合を勝利に導いてくれました。
一方で、声掛けがうまくいかなかった経験もあります。まるで昨日のことのように悔しさをにじませながら語ってくれたのは、10年以上前の、ある大会の決勝戦の記憶。準決勝で劇的な勝利を収めた後の決勝戦でした。
角監督は熱くなりすぎた選手たちの気持ちを、決勝前に一度落ち着かせる必要があると考え、クールダウンさせるようなミーティングを行いました。
「そしたら、力は抜けたんですけど抜けすぎてしまって。試合の集中力が持続しなかったんです。そのせいで負けてしまいました。今でもあの試合は勝てた試合だったなと。自分の責任だと思っています」
と振り返り、こう続けます。
「選手たちには打つ・捕る・投げる・走るための力は十分あります。我々より上手ですよ。ただ、彼らにとっては『緊張し過ぎてるな』と自分の状態に気付いて、自分で気持ちを整えることが難しいんです。そこは我々がサポートしてあげないといけない部分だと思っています」
大きな舞台へ。食らいついて、楽しく挑む

今回の全国大会への参加を、選手たちはとても楽しみにしています。
神戸シャインスターズは、各地のチームと連携して独自の大会や試合を開催することがあります。しかし、財政的な支えは十分とはいえず、有志たちの手づくりで行うことがほとんど。だからこそ、大きな球場で行われるハンズホールディングスCUPのような大会は、普段とは違う貴重な経験です。
角監督が大会で見てほしいのは、明るく、楽しく試合に向き合う神戸シャインスターズの選手たちの姿です。
選手たちには、普段から「一番楽しいのは勝つことやと思うよ」と伝えています。楽しくプレーすることが勝利に近づく力になり、勝てばまた楽しくなる。という良い循環をつくりたいと考えています。
とはいえ、今大会の出場チームは、神戸シャインスターズより強いチームが多いと見ているそう。
「私たちは挑戦する立場だと思ってるんで。食らいついて、楽しくできるかどうかというところを見てもらえたら。選手たちには『楽しかったな』『また行きたいな』と思って帰ってきてほしいですね」と、角監督は話します。
いつか、一緒に試合に出たい

さらに角監督は「私も、うちのチームのメンバーと一緒にソフトボールの試合に出たいですね」という夢を語ってくれました。
普段参加している大会は知的障がいのある選手が対象で、角監督自身は出場できません。しかし、地域の一般社会人のチームと対戦する大会に参加できれば、選手たちと同じチームでプレーできるのではないかと考えています。
それには、一部ルールの違いなどがありますが、選手たちがその違いに適応するという点を差し引いても、一緒に出場したら「自分は足を引っ張る側になるんじゃないかな。『偉そうに言ってたのに。おいおい』って言われてしまうかもしれないですね」と笑う、角監督。
もう一つ、目標のようなものとして持っているのが、ソフトボールを楽しむ人たちの裾野を支え続ける、ということです。
「私は、余暇活動というところから入っているので、原点はそこなんです。上手ではないけれどソフトボールが好き、休みの日にあそこへ行ったらみんなに会える。そういう人たちの活動のフィールドを守っていきたい」
神戸シャインスターズでは、試合や大会に出場するAチームのほうが注目されがちですが、Bチームの活動こそ大事にしたいと考えているそうです。
福祉の仕事を通じて、休日に行く場所や楽しみが見つからない人たちを見てきた経験から、そういう人たちに「こんな場所がありますよ」と、いつでも誘える場を用意しておくことが、自分の役割だと語ってくれました。
試合で勝利を目指す選手も、仲間と体を動かす時間を楽しみにしている選手も、それぞれがソフトボールを続けられる。そういう場を守り続けてきた神戸シャインスターズが、初めての舞台に挑みます。
選手たちが「楽しかった」「また行きたい」と思える経験を重ねていけるように、神戸シャインスターズと、その舞台となるハンズホールディングスCUP全国大会へ、温かい応援をお願いいたします。



