
香川県観音寺市植田町にある「かなくま餅11号線」。観音寺スマートインターチェンジから車で5分の場所にあります。
明治時代に、観音寺市流岡町にある「かなくま橋」のたもとで遍路茶屋の餅屋として創業。橋の架け替えに伴い、昭和42年に現在の国道11号線沿いに移転しました。
現在は、5代目店主であり、うどん作り担当の秋山正輔さんと、運営・広報を担当する妹の多田美和子さんの2人がお店を引き継いで営業しています。
お餅屋さん兼うどん食事処である「かなくま餅11号線」の魅力を、美和子さんに伺いました。
昔ながらの食堂の雰囲気が漂う


かなくま餅11号線は、基本的には席について注文するフルサービス型のうどん食事処です。うどんをはじめ、定食や丼もの、デザートまでメニューが豊富。お惣菜はセルフ形式で提供され、昔ながらの食堂の雰囲気が漂います。座敷席と椅子席を合わせて計48席あり、広々とした店内です。

取材したのは平日の午後2時にもかかわらず、年配のご夫婦やサラリーマン、観光客が続々と訪れていました。
食べたらお金持ちになれるかも!?名物「かねもちうどん」

一番人気のメニューは、「かねもちうどん(小770円)」。銭形の焼印が押された「えび煎餅」と小エビを丸ごとすりつぶして作られる「えびちくわ」、わかめ、お餅がのったうどんです。観音寺の名物を詰め込んだ一杯になっています。
開発のきっかけは、銭蒲(ぜにかま)を先代が買ってきたことでした。観音寺市の「銭形砂絵」を模した一品に、美和子さんが一目惚れしたそう。「銭形砂絵」とは、江戸時代のお金である「寛永通宝(かんえいつうほう)」を描いた巨大な砂絵です。砂絵を見た人は金持ちになれるという言い伝えがあります。
そこで、地元の蒲鉾屋から銭蒲を仕入れ、うどんに載せることにしました。しかし、コロナ禍で銭蒲の製造が中止に。そのため、美和子さんはその蒲鉾屋から銭形の焼印を引き継ぐことにしました。現在は、観音寺の老舗えび菓子専門店「志満秀」のえび煎餅に焼印を押して提供しています。えび煎餅をうどん出汁に浸すと、ジュワッとエビの風味が感じられます。
麺は細麺で、もちっとした食感が特徴です。また、お店自慢のつきたてのお餅は、4種類(こもち、こもち天、あんもち、あんもち天)から選べます。今回は、一番人気のあんもち天をセレクト。あんこが甘すぎず、うどん出汁に馴染み、うどんと交互に食べたくなります。食感も味も異なる食材が盛りだくさんの、ごちそう感がある縁起物の一杯です。
香川のお正月の定番「白味噌あんもち雑煮」

1月限定メニューの「白味噌あんもち雑煮(餅1個入り580円)」は、白味噌にあんもち、にんじん、大根が入った香川ならではの一杯。具材が全て丸なのは、「円満な一年にするために」という言い伝えから。なじみのない人には驚かれる組み合わせですが、香川の人にとっては「これがなくては正月を感じられない」味です。
「亡くなった母の作る雑煮と同じ味」と毎年食べに訪れる常連客もいるそう。歯につくのが気になる方への配慮で、青のりは別添えで提供しています。
お餅へのこだわりと新定番「フルーツ大福」

もち米には香川県産「クレナイ」を使用。臼と杵でつき、しっかりとした伸びとコシのある餅に仕上げます。「故人が好きだったから」とお供えに選ばれることもあるほど、お餅には根強いファンが多いそう。

もともとお店の甘味はお餅とおはぎのみでした。若い世代にもお餅を届けたいと、美和子さんが挑戦したのが「フルーツ大福」です。
第一弾は、観音寺市の農家から仕入れた「さぬきひめ」を使ったいちご大福でした。人気は瞬く間に広がり、ラインナップを拡大。季節ごとにハッサクやメロン、キウイ、イチジク、シャインマスカット、高瀬茶の大福が並びます。果物選びは、美和子さんがお店のスタッフと相談しながら決めていくといいます。産直市場で複数の生産者の果物を買って食べ比べ、その上で、生産者に直接連絡をして仕入れることもあるそう。
「必ず自分で食べて、美味しいと思ったものをみなさんに提供したいんです。それに、農家さんと直接やりとりした方が『こうするともっと美味しく食べられるよ』など、プロから意見をもらえますから」と美和子さん。

店名にちなみ、毎月11日限定で発売される「ナッツおはぎ(300円)」も大人気。3種類のナッツと粒感を残したもち米、甘さ控えめな粒あんの食感が楽しいスイーツです。
地産地消にこだわるお店「毎日食べたくなる、体にやさしいものを」
かなくま餅11号線は、先代が農家出身だったこともあり、地産地消にこだわるお店です。うどんには、香川県産小麦「さぬきの夢」が登場した当初から使い続けています。2004年からは「さぬきの夢こだわり店」にも認定されました。「さぬきの夢こだわり店」とは、さぬきうどん業界のいわば三つ星店です。年間を通じて、「さぬきの夢」を100%使用した麺でうどんを提供しています。認定しているのは、かがわ農産物流通消費推進協議会。めん・だし・サービスの3つの厳しい審査を通過したうどん店です。

うどん出汁は、観音寺の名産である伊吹島産イリコを中心に、昆布、かつお、サバ、ムロアジを独自ブレンド。作るのは、料亭での勤務経験がある兄・正輔さん。調味料を極力減らし、素材の味を生かしたやさしい味に仕上げます。


かなくま餅11号線では、なるべく手作りすることにこだわっています。毎日10種類以上用意するお惣菜もそのひとつ。八百屋さんから旬の野菜を仕入れ、夏はキュウリの浅漬けや、ナスの煮浸しを提供します。お惣菜の定番のコロッケも、毎日店内で手作り。「ここのコロッケが一番おいしい」と言うお客さんもいるそう。
大切にしているのは「毎日食べたくなる、体にやさしいものを」という思い。
実際、毎日朝ごはんを食べに来る年配のご夫婦や、昼にご飯とお味噌汁を注文する常連さんもいるそう。
いつでも帰って来られる店でありたい


国道11号線沿いは、大手チェーン店が増え、年々風景が変わっています。かなくま餅11号線と取引があった町の商店もコロナ禍で減少してしまいました。
美和子さんは穏やかな表情で言います。
「『ここだけは昔からずっとあるよね』と言われるような、みんなが帰って来られる場所であり続けたいです。お腹が空いたら誰でも来てほしい。いつでも誰でもウェルカムな『ザ・食堂』でありたいと思っています」
店舗情報
店名:かなくま餅11号線
住所:香川県観音寺市植田町35−2
電話番号:0875-25-3044
営業時間:8:00〜15:00(土・祝はうどん9:00〜)
定休日:木・日(詳しい営業日は公式Instagram参照)
駐車場:あり(27台)



