コンテンポラリーダンサーとして舞台に立つとき、衣装のテクスチャーや立体感が照明を浴びて生み出す陰影は、身体表現の一部として言葉以上のメッセージを放つことがあります。

京都・西陣で古くから受け継がれてきた「手刺繍」の絹糸が放つ艶やかな光沢と、機械には決して真似できないふっくらとした立体感を目にしたとき、わたしはまるで極上の舞台芸術に触れたかのような高揚感を覚えました。
着物の美しさを、「特別な日のもの」からわたしたちの日常へ
ライフスタイルの変化により、現代において着物をまとう機会は大きく減りました。それに伴い、熟練の職人が一針一針魂を込めて描く手刺繍の美しさに触れる時間も失われつつあります。
そんな現状を打破し、日本の誇る伝統技術を「特別な日のもの」から「毎日の暮らしの中で楽しむもの」へと鮮やかに再定義したのが、株式会社繍栄による新しいモノづくりの挑戦です。贅沢な手刺繍着物生地を、現代のわたしたちが毎日使える上質なポーチやポシェットへと生まれ変わらせました。

「うわーっ……」と息を漏らしてしまいそうな美しさですよね!
相良、平、汕頭、刺子。半年以上をかける「時間の芸術」
株式会社繍栄は、京都市上京区の西陣で手刺繍の着物や帯を手がける会社です。相良(さがら)、平(ひら)、汕頭(スワトウ)、刺子(さしこ)といった多彩な技法を極めた職人が、光と影、立体感を緻密に縫い上げていきます。
一着を仕上げるのに半年、時には1年以上を費やすこともあるという手仕事は、同社が「時間の芸術」と表現するほど。着物づくりのほかにも、着付けや手刺繍の体験といった和文化に触れる機会づくりや、日本の伝統文化を国内外へ発信する取り組みも行っています。
学生の感性と交差する、世代を超えたバトンパス
わたしがこのプロジェクトに強く惹かれたのは、京都の若い学生たちとの「共創」によって生まれたという点です。学生たちは素材選びやデザイン、ファスナーやストラップ選びにまで関わり、現代のライフスタイルに寄り添う絶妙なサイズ感やカラーリングを追求しました。制作の過程はSNSなどでも発信されています。
書店員時代に、時代を超えて読み継がれる古典文学が新しい装丁をまとうことで若者の手に渡っていく瞬間を何度も目にしてきました。まさにそれと同じ、世代を超えた美しいバトンパスがここで行われているのです。
マルメの街へ連れ出したい、世界にひとつの伝統
いてもたってもいられず、株式会社繍栄でMakuakeプロジェクト推進責任者を務める齋藤さんへ直接ご連絡を取り、この熱い取り組みを記事として発信させていただくことになりました。生地の切り出し方によって柄の出方が一点一点異なるため、手元に届くのは世界にただ一つのプロダクトです。
ポーチはマチ幅と内ポケットを備え、コスメやイヤホン、リップ、充電器などを収納できるつくり。ポシェットは長さを調整できるショルダーストラップ付きで、スマートフォンやミニ財布、鍵を入れて身軽に出かけられます。

2026年11月から、わたしはワーキングホリデーでスウェーデンのマルメへ長期滞在します。古いものを慈しみ、新しい価値を見出して長く愛用する北欧の地へ、この西陣の手刺繍ポシェットをぜひ連れて行きたい。
遠く離れた異国の街角で、京都の職人の手仕事と学生たちの情熱が込められたポーチからリップを取り出す瞬間を想像するだけで、今から胸が高鳴ります。伝統をガラスケースに飾って終わらせるのではなく、自らの手で日常へ連れ出す。
西陣の街で、手刺繍の着物に触れる
株式会社繍栄があるのは、京都市上京区浄福寺通五辻下る。着物の帯などで知られる西陣織の産地、西陣の一角にあり、職人の手仕事が今も息づく地域です。
公式サイトでは、見学会や着物の無料試着フェア、初めて着物にふれる人向けの「和装ビギナーズフェア」などの催しが案内されています。小物から手刺繍の魅力を知ったら、職人の技が詰まった一着に実際に袖を通してみるのも、京都ならではの楽しみ方です。
このポーチとポシェットは、2026年11月29日までの予定でクラウドファンディングによる先行販売が行われています。齋藤さんたちが仕掛けるこの美しい挑戦や、手刺繍の着物については、ぜひ株式会社繍栄の公式サイトから覗いてみてください。



