京都府福知山市に、築120年の古民家を生かした「リトリートかるむ」があります。
農薬や肥料に頼らない自然農法で育てたお米を炊き、囲炉裏を囲んで食事をする。薪で沸かすお風呂に入り、畑や田んぼで土に触れるなど、昔ながらの日本人らしい体験ができる場所です。
「暮らしそのものを体験してもらいたい」
そう話すのは、オーナーの西川真紀子さん。傷んだ古民家を再生した理由から、食への考え方、福知山への想いまで、お話を伺いました。
傷んだ古民家、それでも暮らしの拠点に
真紀子さんが新たな拠点を探し始めたのは、自然災害など、もしもの時の暮らしについて考えるようになったことがきっかけでした。
「歩いて行ける範囲で農業ができて、水や食料、最低限のエネルギーを確保できる場所で暮らしたいと思ったんです」
大阪から行き来できる地域を探す中で出会ったのが、福知山の古民家です。インターネットで見つけた時から、心を引かれていたといいます。
ところが、現地を訪れると、建物は想像以上に傷んでいました。台風で損傷した屋根にはブルーシートが掛けられ、家には傾きがあり、壁にはカビ、床が抜けている箇所も。そのまま暮らせる状態ではない壮絶な現状を気遣い、周囲からは反対されたそうです。

「実際に見たら本当にすごい状態でした。でも、それでもやっぱり『ここだ』と思ったんです」
田畑が近くにあり、大阪との行き来もできる。条件に加えて、真紀子さんの背中を押したのは、その場所に直感的なご縁を感じたからでした。
「ここが好き。ここで暮らしたい」
購入後は屋根や床などを大規模に改修し、手をかけながら、人を迎えるリトリートかるむへと整えていきました。

子育てと仕事、旅の経験がつながる場所
真紀子さんは20代の頃、幼い子どもたちを育てながら、リサイクルブティックを開業しました。その後、不動産賃貸やレンタルスペース、ゲストハウス、ヴィーガンカフェへと仕事の幅を広げてきました。
衣、食、住、そして人が集う場所づくりへ。初めからすべてを手がけようと決めていたのではなく、一つひとつの仕事が今の暮らし方につながっていったといいます。

国内外を旅してきた経験も、今の場所づくりの土台です。各地の温泉や宿を巡り、海外ではバックパックを背負って旅をすることもありました。
高級ホテルでフランス料理を楽しむ日もあれば、1泊数百円の安宿に泊まり、名前も分からない屋台料理を味わう日も。子どもたちには、さまざまな環境を楽しみ、たくましく生きてほしい。その思いを持って育ててきたそうです。
ひとつの価値観にとらわれず、それぞれのよさを知る。その姿勢は、昔ながらの暮らしと現代の快適さを取り入れた、かるむにも通じています。
食べ物の背景を知り、自分で選ぶ

健康について学び、自身の食や暮らしを見直したことをきっかけに、真紀子さんは大阪でヴィーガンカフェ・あすかを開業しました。食への関心は、自然農法や発酵食にも広がっていきます。
「普段はシンプルな食事を大切にして、その分、好きな時には好きなものを思い切り楽しみたいんです。死ぬまで元気に働いて、旅行も楽しめる体でいたい。それが私自身の目標です」
今大切にしているのは、何か一つの食べ方を正解とすることではなく、食材やその背景を知り、自分で選ぶことです。
その考え方は、一見すると対照的なヴィーガンとジビエにもつながっています。
真紀子さんがジビエに関心を持った背景には、鹿や猪による農作物への被害があります。農に関わる中で、捕獲された動物の命をどう受け止め、生かしていくかを考えるようになりました。
「捕獲する必要があるのなら、その命を無駄にせず、おいしくいただきたい」
適切に処理されたジビエのおいしさも、もっと多くの人に知ってもらいたいといいます。真紀子さんが目を向けているのは、食肉やペットフードとしての活用だけでなく、捕獲された動物の処分に伴う運搬や焼却のこと。
ジビエを知ることが、家畜の飼育や、そのために必要な飼料・土地について考えるきっかけにもなればと考えています。動物性のものを食べない選択も、捕獲された動物の命をいただく選択も、その背景を知った上で自分で選ぶことを大切にされているそうです。
手をかけた食品を、福知山から届ける

真紀子さんが食を届けたい相手は、かるむを訪れる人だけではありません。
自然農法のお米や米粉、梅干し、発酵食品のほか、ヴィーガンやグルテンフリーの食パン、クッキー、ケーキなども作り、インターネットで販売しています。
真紀子さんは、アレルギーなどの理由で食べられるものが限られている人や、食品選びに苦労している人にも、選択肢の一つとして届けたいと考えています。
自分たちで育てたものや、手をかけて作ったものを、必要としている人へ。かるむでの食の取り組みは、福知山の外へもつながっています。
かまどと囲炉裏で、食事をつくる時間を楽しむ

かるむでは、自分たちで育てたお米をかまどで炊きます。食材を用意し、火を使い、炊き上がりを待つ。食べるまでの時間も、ていねいな暮らしの体験の一部です。
囲炉裏では、ジビエまたはヴィーガンBBQを楽しめるほか、近くのお店で購入した食材で楽しむこともできるそうです。何を食べるかを選び、調理し、火を囲む時間を分かち合います。

朝食はごはんのほか、グルテンフリーの米粉トーストも選べるといいます。食の選択肢を用意するところにも、真紀子さんの考え方が表れています。
薪風呂や畑仕事から、暮らしに触れる

薪で沸かす露天風呂も、かるむの特徴の一つです。木や薪棚に囲まれた湯船で、昔ながらの燃料を使う暮らしに触れられます。
このほか、マコモ蒸しや発酵教室、畑や田んぼで土に触れる体験もあります。
古民家のよさと、今の快適さを取り入れる

かるむには、畳の部屋や縁側など、古民家らしい空間が残されています。一方で、水回りなどは使いやすく整えられています。
「昔のいいものを残したい。でも、今の便利さや清潔さも大切にしたいんです」
古さそのものを残すのではなく、これからも暮らし、人を迎えられる場所にする。その考え方が、改修後の空間にも表れています。
かるむから、福知山のこれからへ

真紀子さんが思いを寄せているのは、宿だけではありません。周囲の田畑や山、昔ながらの家と暮らしも、この地域の大切な魅力だと考えています。
「福知山は本当にいいところなんです。まずは遊びに来て、この土地を知ってほしい。そして、ここで暮らしてみたいと思う人が増えたらうれしいですね」
訪れる人が土地を知り、関心を持つ。その先に、田畑を耕したり、山や里山の手入れに関わったりする人とのつながりが生まれることを、真紀子さんは願っています。
かるむが、福知山を知るきっかけになる。やがて、遊びに行く場所から、暮らしてみたい場所へと変わっていく。宿づくりの先には、そんな地域へのビジョンがあります。
福知山で、暮らしを体験してみませんか

リトリートかるむには、ごはんが炊けるまで待つ。火を囲む。土に触れる。誰かと食卓を共にする。いつもの生活とは少し違う手間をかけながら、自分を見つめる時間を体験できます。
「ぜひ一度、福知山へ遊びに来てください。皆さまにお会いできる日を楽しみにしています」と真紀子さん。
暮らしを体験し、のどかな土地を知る旅先として、リトリートかるむを訪れてみてはいかがでしょうか。
※記事内の画像はすべて、西川真紀子さんにご提供いただきました。
京都福知山リトリートかるむ|施設情報
所在地:〒620-0825 京都府福知山市上野92
電話番号:0773-21-6411
アクセス:JR福知山駅からバスで約30分、「生野里」下車後、徒歩約8分
駐車場:9台
公式サイト:https://calme2023.com/
予約・問い合わせ:https://calme2023.com/contact/
Instagram:https://www.instagram.com/retreat.calme
オンラインショップ(BASE):https://0729calme.theshop.jp/
※宿泊、食事、体験の内容や料金は変更される場合があります。予約前に公式サイトで最新情報をご確認ください。



