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人  |    2026.09.23

「歌いたい」から始まった地域創生|北海道勝手に観光大使【ぱんちゅなピーナッツ】

北海道の田園風景に並ぶ、二つのアフロ。

大自然にそぐわないギラギラの衣装をまとい、颯爽と歩くのは「ぱんちゅなピーナッツ」。洋楽を中心に歌う、ジャワ13号とおおまさりネオの2人によるパフォーマンスユニットだ。

肩書きは「北海道勝手に観光大使(非公式)」。

行政との契約はない。正式に任命された事実もない。頼まれてもいない。それでも、勝手に北海道を盛り上げにいく2人を追った。

歌を聴いてもらう方法を考えたら、アフロになった

鷹栖町のオサラッぺ川に架かる「メロディー橋」を歩くぱんちゅなピーナッツ

ぱんちゅなピーナッツが結成されたのは、2人が「好きな歌を歌いたい」から。しかし、ただ歌うだけではおもしろくない。どうせなら北海道も盛り上げようと、「北海道勝手に観光大使(非公式)」を名乗り始めた。

2人が出会ったのは旭川市で行われた歌のイベント。めちゃくちゃに歌が上手だったおおまさりネオをジャワ13号がナンパし、互いに好きな洋楽を歌いたいという想いが一致し、結成に至った。

「FUNK THE PEANUTS」から着想を得たユニット名。メンバーネームのジャワ13号とおおまさりネオは、実在するピーナッツ(落花生)の品種から、字面のおもしろさだけで選んだ。

そして一度見たら忘れられないビジュアル。巨大なアフロにサングラス、ギラギラの衣装からのぞく美脚。自然豊かな北海道には似つかわしくない風貌だ。

「かわいいお姉さんが町を紹介するのと、ギラギラのおばさんが紹介するの、どっちが目を引くと思うかしら?」

歌を聴いてもらうには、まず存在に気づいてもらわなければならない。単に好きなように歌い、営業するだけでは広がらない。色々考えた結果、アフロになった。おもしろに振り切っているだけかと思いきや、きちんとマーケティングにも目を向けている。実は真面目なのだ。

アフロを止める人がいなかった鷹栖町

なぜか協力的な鷹栖町まちづくり推進課広報広聴係の担当者とおおまさりネオ

ぱんちゅなが勝手に応援している町の一つが、上川管内の鷹栖町だ。

知人を通して鷹栖町のまちづくり推進課広報広聴係とつながった2人。アフロで歌う明らかに異質な2人組に対し、戸惑うどころかすんなり受け入れ、話を広げていく広報担当の面々。打ち合わせをするうちに次々と案が生まれ、そのまま町内へ取材に出向くことに。広報担当者がカメラを回し、気づけば鷹栖町のInstagramに登場するぱんちゅなピーナッツ。

こうして、2人が鷹栖町へ出向き、町側がその姿を撮影して発信する流れが生まれた。ぱんちゅなの存在をじわじわと鷹栖町に根付かせていきたいと考えているのは2人だが、鷹栖町側もその過程を一緒におもしろがっている。

「勝手に」観光大使を名乗っていても、無断で行動しているわけではない。イベントに出没する際は、事前に担当者に話を通し、町側も必要に応じて撮影や発信に加わる。

鷹栖町のイベントでは、子どもを前へ出しながら近づいてくる親子の姿があった。実は母親のほうが2人に興味を持っているということを察し、母親を自分たちの隣へ引っ張り出したぱんちゅな。

やってみたいことがあっても、年齢や立場、周囲の目を気にして自分を抑えている大人は少なくない。ぱんちゅなは、そんな大人の気持ちを表に出させるきっかけにもなっている。

勝手に動く2人を、町もおもしろがって受け止める。ぱんちゅなが『全員変な人』と評する鷹栖町のまちづくり推進課広報広聴係とは、こうして妙な連携が成立している。

「生の変なもの」はAI時代の社会教育になるか

写真左:おおまさりネオ/写真右:ジャワ13号

ぱんちゅなは、鷹栖町だけにとどまらず、北海道各地の町のステージにも立っている。

各地へ赴きながら、ジャワ13号がひそかに見ているのは子どもたちの反応だ。もともと教育関連で働いていた彼女は、ぱんちゅなを目の前にして固まる子どもたちの姿に手応えを感じたそう。

SNSで奇抜な格好や突飛な行動をする人を日常的に見ている世代なのに、目の前に生身のアフロが現れると何もできなくなってしまう。画面上でエンタメを摂取することが当たり前になっている昨今で、「生の変なもの」が与えるインパクトは大きい。

AIが進化すれば、正解らしいものは簡単に出せるようになる。しかし自分は何をしたいのか、何を表現したいのかは、AIに決めてもらうものではない。子どもたちがこうして正解を出すことだけに慣れてしまえば、AIを「使う側」ではなくAIの「言いなり」になる人が増えるのではないか。ジャワ13号は以前から、そんな危機感を抱いていた。

ぱんちゅなの活動は、そんな問題意識に対する一つの実践でもある。好きな歌を歌い、聴いてもらう方法を考えた結果、アフロをかぶって北海道を歩くことになった。正解を叩き出すAIも、さすがにこの答えにはたどり着かないだろう。

自分で考え、自分で表現し、やりたいことを実際にやる大人の姿を見せる。その意味では、ぱんちゅなの活動も社会教育のような役割を果たすのかもしれない。

もっとも、2人は誰かを励ますために結成されたわけではない。ただ歌いたかっただけだ。

「好きなことをやってもいい」と言葉で伝えるより、自分たちが好きなことをやっている姿を見せる。それは最初から掲げていた目的ではなく、活動のあとから生まれたメッセージだ。

北海道のパセリになりたい

地域へ出向いて歌を歌い、町の人と関わり、その場所を発信する。気づけば、ぱんちゅなの活動は地域創生と呼べるものになっていた。

ただ、2人は最初から地域創生の理念を掲げていたわけではない。好きな歌を歌いたい、せっかくなら聴いてもらいたい。どうせ出かけるなら、その町も盛り上げたい。

すべては自分たちが楽しむことから始まっているが、その楽しさは2人の中だけで完結するものではない。歌えば人が集まり、町を歩けば視線を集め、気づけば周囲の人まで巻き込んでいく。

2人が何より大切にしているのは、そんなふうに自分たちが楽しみながら活動を続け、その先で町にいつもと違う景色が生まれることだ。

ぱんちゅながいなくても、北海道の町は困らない。ただ、2つのアフロはいつもの景色に彩りを添えてくれる。

2人が目指すのは「北海道のパセリ」だ。不可欠な存在ではないけれど、いたら少しおもしろい。

あなたの町にも、ぱんちゅなピーナッツが出没するかもしれない。勝手に。

ぱんちゅなピーナッツ

Instagram:@panchu_na_peanuts

TikTok:@user1613038527383

ステージのご依頼はInstagramのメッセージまで

鷹栖町まちづくり推進課広報広聴係

鷹栖町HP:https://www.town.takasu.hokkaido.jp/

Instagram:@takasu_attakasu

※記事内の画像はすべてぱんちゅなピーナッツ様よりご提供いただきました。

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この記事を書いた人

徳田 このみ

北海道札幌市在住のライター。Mediallでは、お店や事業など「何かを一人で始めた人」を中心に紹介しています。 その人の想いやこだわり、裏側にあるストーリーなど、丁寧に魅力を伝えます。

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