
東大阪市役所の目の前に本店を構える「中華そば九兵衛」。深夜から仕込む自家製麺と、国産の鶏を使ったスープが特徴です。居酒屋からラーメン店へ転身し、試行錯誤を重ねてきた店主・小野寺さんに、店の歩みと中華そばに込めた思いを伺いました。
フランチャイズから独立へ。自家製麺にたどり着くまで

昔は長瀬・近大通りで居酒屋を経営していたという小野寺さん。「お酒を飲む学生さんが減ってきている」という肌感覚が、ラーメン店を始めるきっかけになりました。
ラーメン屋さんで働いたことはあったものの、一から作るノウハウはほとんど持っていなかったといいます。そのため、「一度フランチャイズに入ったほうが早い」と考え、豚骨系ラーメンのフランチャイズへ加盟。現在の場所で「らぁめん甚兵衛」を開業しました。
「効率的に始めるためにFCに加盟したんですけど、お店を続けるうちに『やっぱり自分でいろいろ作りたいな』って思って。それで、『麺屋TRY』にリニューアルしたんです」
豚骨系のメニューに加え、鶏ガラの自家製スープにも挑戦し始め、どんどん手作りにシフトしていきました。当初は製麺所から購入していたという麺も、今では自家製に切り替えています。スープのおいしさを追求するあまり、「以前は麺に熱意を向けていなかった」という小野寺さんですが、試行錯誤する中で自家製麺を試したとき、「これまでとはおいしさが全然違う」と感じたのだとか。すぐさま製麺機を導入し、自家製麺の提供を始めたそうです。

「この頃はまだ豚骨もやってたんですけど、鶏ガラのほうが分かりやすく自家製麺を味わえるなという気付きがあって。鶏ガラ一本でいこうと決めて、メニューを変更しました」
その後、長田駅前に「中華そば九兵衛」を出店。2020年には、荒本の店舗も麺屋TRYから「中華そば九兵衛本店」へ再リニューアルしたのでした。
深夜から仕込む、自家製麺と鶏の一杯
九兵衛の麺は、「伊勢の響」などをブレンドした国産小麦のストレート麺。小野寺さんがすべての店舗分を仕込んでおり、製麺作業が始まるのは早ければ午前2~3時だそうです。
「遅くても4時、5時ごろには始めてますね。あと、鶏屋の仕事も朝イチで終わらせて、それから店に立って――」
“鶏屋さんの仕事”とは?
鶏屋を引き継ぎ、ラーメンに生かす

実は小野寺さん、市内にある鶏の精肉加工・卸売店「鳥弘商店」の現オーナーでもあるのです。鳥弘商店さんが店仕舞いするという話を聞き、お店を買い取って事業を引き継ぎました。
「九兵衛で使う鶏もそこで仕入れられるし、ガラはラーメンのスープにも使えるので、一石二鳥かな」
スープは国産の丸鶏をベースに、精肉の過程で出た端材や骨なども余すところなく使用しています。
そして、かえしは小豆島産の醤油のほか、煮干し、かつお節、昆布、貝を使っただしの素材を合わせます。1週間寝かせて完成するこのかえしも、小野寺さん自ら丹念に仕込むのだそう。ここにも、自家製麺をおいしく味わってもらいたいという思いが表れています。
根強い人気は中華そば+半ちゃんセット

一番人気のメニューは「中華そば+半ちゃんセット」です。
取材時も、お店のオープン直後から次々とお客さんが入ってきました。たしかに半ちゃんセットを注文する方が多いという印象で、その人気の高さが伺えます。

季節限定メニューも評判が良く、取材日にはちょうど冷やしそばが終売し、秋冬に向けて味噌ラーメンが始まったところでした。限定メニューは単に季節感を出すのではなく、「鶏を堪能してもらう」ことを意識しているといいます。
カウンター席にいらっしゃった常連の方にお話を伺うと、「ここに来ると安心感がある」と笑顔で答えてくださいました。
「いつもは半ちゃんにするんやけど、今日は気付いたらホルモン丼を頼んでました。しょーがないよね、これもおいしいから」
中華そばの傍らには、たっぷりのホルモン煮込みにマヨネーズのかかったガッツリ系のどんぶりが。
このホルモン丼も、実はリピート率が高いメニューだそうです。
店名に込めた、東大阪とのつながり

フランチャイズでラーメン店を始めた当時の店名は「甚兵衛」。東大阪ゆかりの人物で、大和川の付け替えに尽力した中甚兵衛(なか じんべえ)にちなんだ名前だといいます。独立して始めた「麺屋TRY」の「TRY」は、ラグビーに由来するものです。ラグビーのまちとして知られる東大阪を意識した店名でした。
そして現在の「九兵衛」へと変わったわけですが、「九兵衛」は中甚兵衛の子孫にあたる人物が襲名した名前だと言われています。本店があるのは東大阪市役所の目の前ということもあり、「地元に関連する名前のほうがおもしろい」と考えて付けた店名だそうです。市の職員の方々もよくお店を訪れるといいます。

また、九兵衛は東大阪で開催されるイベントにもたびたび出店しており、筆者が以前取材した「河内おいしいもん市」にも3年連続で参加しています。
「『東大阪』と名前のつくイベントからオファーがあったら、できるだけ参加しようと思ってます。地元のイベントだと、高校時代の同級生とか、久しぶりに会う知り合いが来てくれるのが楽しいですね」
九兵衛のこれから

2026年10月現在は、東大阪市内の荒本本店と長田店、そして、大阪市内にある堺筋本町店の3店舗。これ以上店舗を増やすよりも、まずは今ある店をしっかり育てていきたいといいます。
「最近はスタッフが頑張ってくれていて、成長を感じます。ラーメン屋をやりたいと言ってくれる若い子も増えてるんです。『社員にしてください!』って。有難いですよね」
若者がラーメン屋に興味持ってくれるのは嬉しい、と小野寺さんは話してくださいました。今は製麺もかえしの製造も小野寺さん1人で担っていますが、いずれその製法が誰かに引き継がれるのかもしれません。
「ぜひ味わってほしい」と、店主が自信を持っておすすめする自家製麺。国産鶏のうまみを生かしたスープとともに、九兵衛でしか味わえない一杯を楽しんでみてください。
中華そば九兵衛本店
住所:大阪府東大阪市荒本北2-3-6
電話番号:080-3104-1497
営業時間:全日10:30〜21:30
Instagram:@kyubee_aramoto
近鉄けいはんな線「荒本」駅より徒歩約4分
阪神高速13号東大阪線 東大阪荒本出入口より約3分
(駐車場あり/5台)
<参照サイト>
大和川物語|大阪府柏原市
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