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バックストーリー  |    2026.10.03

【徳島県】有限会社 阿波食品|コロナ禍のピンチをバネに、鶏肉加工業から生まれた新たな挑戦

徳島県阿波市で鶏肉加工業を営む有限会社阿波食品。

代表の大塚由香社長は、「ものづくり補助金」を活用して導入したレトルト加熱加工設備をきっかけに、常温で長期保存できる画期的な鶏肉商品を次々と生み出してきた。

アスリートや医療従事者、防災備蓄、ペット向け市場など、これまでの卸売業では出会えなかった新しい顧客層へと、着実に販路を広げている。

設備導入直後に襲ったコロナ禍という未曾有のピンチを、大塚社長はどう乗り越え、次の挑戦へとつなげたのか。その思いと行動力に迫った。

標準化がつくる、ブレない品質|有限会社 阿波食品とは

阿波食品のルーツは、大塚社長が生まれた1970年代初頭、祖父が立ち上げた食鳥処理事業「阿波殖産」にさかのぼる。

農場で鶏を育て、自社工場で処理し、関西の問屋やスーパーへ出荷する事業は、祖父の努力によって急成長した。しかし平成10年、食鳥処理部門を他社に譲渡し、串打ちやカットといった加工部門だけが残る。これが現在の阿波食品の土台となった。

現在の主力事業は、学校給食や病院給食、飲食店向けの鶏肉加工だ。

大塚社長の強みは、家業に入る前に県内のベアリングメーカーで14年間サラリーマンとして働き、生産管理やトヨタ式「かんばん方式」を実践してきた経験にある。そのノウハウを食肉加工の現場に持ち込み、ヒューマンエラーを防ぐ色別管理などをゼロから構築。

「誰がやっても品質がブレない標準化された生産体制」を築き上げたことが、同社の確固たる基盤となっている。

下請け依存からの脱却、そして直撃したコロナ禍

安定した生産管理体制を築き上げる一方で、阿波食品は売上の大幅な減少という危機にも直面してきた。長らく商社の指示通りに納品する下請けが事業の中心だったが、ある時期、頼りにしていた給食関係の仕事が突然激減。特定の取引先に依存し、自分たちで価格を決められない状況のリスクを痛感した。

そこで力を入れたのが、自社独自の商品開発だ。「常温で保存したい」「調理の手間を省きたい」という顧客の声に応えるべく、2018年、思い切ってレトルト加熱加工設備を導入した。この設備導入では「ものづくり補助金」に挑戦したが、何度も不採択に。それでも諦めず申請書を練り直し続け、ようやく採択を勝ち取った。

しかし、新しいレトルト設備が稼働し始めた矢先、今度はコロナ禍が直撃する。給食の仕事が完全にストップし、予定していたイベントもすべて白紙になるという、さらなる困難に見舞われた。

「怖くても動き続けるしかない」レトルト設備をフル活用した挑戦

「以前、売上が激減した際は、ショックのあまりどうしていいか分からず、ただフリーズしてしまった経験がありました。でも今回は、あの時の『動けなかった悔しさ』があったからこそ、『怖くてもとにかく動き続けるしかない』と腹を括ることができたんです」と大塚社長は振り返る。

給食の仕事が止まっている今だからこそ、導入したばかりのレトルト設備をフル活用するしかなかった。化学調味料無添加の防災備蓄用「1年ささみ」、健康意識の高いアスリート・医療従事者向けの「ICHOKA for ATHLETE 国産鶏ささみ」などを次々と開発。さらに、鶏肉加工の際に出る砂肝などの端材を廃棄せずレトルト殺菌し、「半年アニマルフード」として販売する取り組みも始めた。今まで捨てていた部分を活用することで、年間90kgもの食品ロス削減にもつながっている。

※「ものづくり補助金」は、中小企業・小規模事業者等の革新的サービス開発や生産プロセス改善を支援する国の制度。阿波食品はこれを活用しレトルト設備を導入し、商品の常温・長期保存化を実現した。

「生きる力を支える」阿波食品が届ける安心

「結果がどうなるか分からなくても、恐れずに動き続けること」——コロナ禍で得た一番の気づきを、大塚社長はこう語る。フリーズせず展示会に足を運び、様々な人に助けを求めながらもがき続けたことで道が開けた。開発した「1年ささみ」などは、卸売だけでは出会えなかった医療従事者やアスリートに直接届き、喜ばれている。

その行動が評価され、レトルト設備導入時に提出した「経営革新計画」の5年間の取り組みが認められ、「徳島県頑張る中小企業大賞 最優秀賞」を受賞。

「この受賞は私個人の力ではなく、私が展示会で不在の間も現場を守ってくれたスタッフや外部専門家による支援のおかげ」と大塚社長は感謝を語る。同社の経営理念は「生きる力を支える」。ただ物を売るのではなく、本当に困っている人へ安全な食をダイレクトに届け、「助かったわ」と言ってもらえる信頼関係を築くこと。この表彰を通じて、地域社会における自社の存在意義がより明確になったという。

目指すは「地域における安心のハブ」

これからの目標は、阿波食品を「地域における安心のハブ」に育てていくことだ。その一環として、月に1回、工場直売イベント「いっちょかーMarket」を開催し、すでに3年以上継続している。当初は集客に苦労したが、今では地元の人々が毎月楽しみにし、SNSを見て遠方から訪れる人もいるという。

マルシェでは自社商品や地元野菜の販売のほか、ペットボトルキャップの回収による途上国へのワクチン寄付、不要になった学生服の回収・再利用活動なども行っている。「隣近所の関わりが希薄になった今の時代だからこそ、災害時や誰かが困った時に『あそこに行けばなんとかなる』と頼りにされる存在でありたい。そのために、普段から地域の関係人口を増やし、他愛のないコミュニケーションが生まれる土壌を作っておくことが欠かせません」

毎月開催している「いっちょかーMarket」の情報は、阿波食品のInstagramで確認できる。
>>いっちょかー/阿波食品

会社情報

有限会社 阿波食品(徳島県阿波市)

学校給食・病院給食・飲食店向け鶏肉加工を主軸に、自社開発の常温保存商品も展開。

住所 徳島県阿波市土成町土成美緑167
電話 088-695-2206
WEB https://awashokuhin.co.jp/

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この記事を書いた人

せっちー(大島節子)

1975年 大阪市生まれ。1998年家業マルワ什器入社。2001年、26歳のときに売上の95%以上を占める得意先が倒産する、という人生の試練を経験。連鎖倒産の危機を回避し家業を立て直す過程で多くの展示会現場に携わる。これまで関わってきた1000件を超える展示会経験を元に2012年展示会情報サイト「展活」を開設。2013年からは展示会セミナーの講師として活動開始。登壇回数300回以上、指導人数10,000人以上の実績。展示会初出展企業にも具体的でわかりやすい指導が好評を得ている。初の著書『展示会を活用して新規顧客を獲得する方法』好評発売中。

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