地元の偉人・佐藤春夫の記念館
2026年10月7日に新宮市で行われた「新宮市立佐藤春夫記念館」のリニューアルオープン式典の様子をお届けします。

新しい場所で、新しい記念館がオープン!
新宮市出身の詩人・小説家、佐藤春夫。その遺品や資料を保存・展示してきた佐藤春夫記念館が、装い新たに開館しました。
開館は10月7日(水)の午後1時。先んじて午前中に行われた記念式典には、市長をはじめ、ご親族や関係者、地元の皆さん約60人が集まりました。
落ち着いたベンガラ色の壁に瓦屋根、洋風と和風が溶け合う外観は、佐藤春夫が晩年東京で過ごした自宅を移築し受け継いできたものです。
記念館の開館は平成元年11月。それから長い時を経て、丹鶴城跡のそばに根を下ろしています。敷地奥の駐車場にはバリアフリー対応の玄関もあり、誰でも訪れやすくなっています。
感謝状の贈呈とテープカットで門出を祝福
式典では、記念館の実現に尽力した方々へ市から感謝状が贈られました。
ご親族の髙橋百百子さん、監修・研究面で協力した東京大学准教授の河野龍也さん、長年にわたり敷地を提供してきた熊野速玉大社さん。さらに、設計や施工、電気設備、造園などに携わった地元企業の皆さんにも、一人ずつ感謝の言葉が贈られました。
会場に拍手が響くたび、「多くの人の力が重なってできた場所なんだな」と実感します。
続いて行われたのは、来賓によるテープカット。

そのあとには、地元に伝わる「新宮節」が披露されました。
司会の説明によれば、この唄の前半は春夫の父・豊太郎、後半は春夫が作詞したとのこと。普段は前半ばかりが歌われがちですが、「後ろの方の歌詞にも思いを寄せてほしい」という言葉が印象的でした。

館長が語った「空青し 山青し 海青し」
館長の挨拶では、移転が無事に整った喜びとともに、佐藤春夫ゆかりの地への思いが語られました。
この春に山へ登り、春夫が小説に描いた景色の痕跡を探したこと。道路の拡張などで景観は大きく変わっていたものの、その場所に立って、あの有名な一節が生まれた情景を思い浮かべたこと。
そして館長は、最後にこの一節を口にして、あいさつを締めくくりました。
「空青し 山青し 海青し」
新宮の空と山と海。その風景が、そのまま春夫の言葉になっていることを、改めて教えてもらった気がします。
また、周辺には西村記念館や旧チャップマン邸もあり、「この一角を新宮が誇る文化の拠点にしていきたい」「3館が連携して情報発信を進めたい」という展望も語られました。
神奈川近代文学館でも佐藤春夫展が開かれており、あわせて春夫文学を見直すきっかけになれば、という言葉もありました。
「おじちゃん」と呼んだ孫が語る、素顔の「春夫」
式典のあと、ご親族の髙橋百百子さんにお話を伺うことができました。

幼い頃、春夫と同じ家で過ごしたという髙橋さん。思い出として挙げてくれたのは、庭の百日紅(さるすべり)を背にして、ベッドの上で原稿を書いていた姿でした。
春夫はどんな人でしたか? と尋ねると、「怒りっぽくて、でもユーモアがあって、毒舌でした」と笑顔。タバコばかりふかしていたそうです。
館内にはタバコのエピソードがより深く感じられる展示も。(※当日、報道関係者のみ撮影可能との案内がありました。)

呼び名は「おじいちゃん」ではなく、「おじちゃん」。血縁の関係から、そう呼んでいたそうです。
私は卒業した小学校と中学校で、佐藤春夫作詞の校歌を歌いました。そのことを髙橋さんに話すと、とても優しい笑顔を向けてくださいました。また、学校の歌詞を書くくらいなので、子どもが好きだったのでしょうかとインタビューしたところ――、子どもが大好きで、高橋さんもきょうだいも、一度も叱られた記憶はなかったそうです。また、来客が子どもを連れてくると大歓迎だったとのこと。とても温かいエピソードでした!
建物の思い出では、2階の踊り場にあった洋式の水洗トイレが「よそでは絶対にないもので印象的だった」とのこと。応接間や2階の和室も、記憶に残る場所だそうです。

散歩がてら、春夫の世界へ
髙橋さんは、「速玉さん(熊野速玉大社)へ行ったけれど気づかなかった、という方もいたので、お散歩がてら盛り上げてもらえたら嬉しい」と話していました。
熊野速玉大社、旧チャップマン邸、西村記念館、そして新しい佐藤春夫記念館。歩いて回れる範囲に文化の拠点がそろったことで、新宮の町歩きがますます楽しくなりそうです。
春夫の文学に詳しくなくても、「怒りっぽくて、子ども好き」という人間味あふれる素顔に触れるだけで、ぐっと親しみがわいてきます。
あなたは、どんな「春夫」に出会ってみたいですか? ぜひ足を運んでみてください!
見どころと基本情報
リニューアルを記念して、12月10日まで特別展示が行われています。
- 高村光太郎が描いた「佐藤春夫像」を新宮市で初公開
- 貴重映像「現代日本文学巡礼」より佐藤春夫のパートを公開
- 河野龍也先生の協力による、新しい研究成果を盛り込んだ解説パネルを常設
開館時間は午前9時〜午後5時(入館は4時半まで)。休館日は月曜日・祝日の翌日・年末年始です。入館料は一般330円、小・中学生160円。駐車場は5台分(うち1台は車いす使用者用)です。
こぼれ話
記念式典に出席すると、こちらのお洒落なエコバッグをいただけました!
A4がらくらく入ってマチもあり、柔らかめのキャンバス地なので、なんにでも使えそうです👜




