フード  |    2026.10.28

65年以上続く「林仙堂」受け継がれる味と家族の物語【愛媛県松山市】

愛媛県松山市で、65年以上にわたって和菓子を作り続けている「林仙堂(りんせんどう)」。

昔ながらの味を守りながら、時代に合わせて新しい商品も生み出してきました。

今回お話を伺ったのは、二代目としてお店を受け継いできた林聖二さん(以下、聖二さん)と、聖二さんを支えてきた妻のるり子さん。65年以上続くお店だからこそ見えてくる、変わらないものと、変わってきたものについて聞きました。

「昔から変わらないのは、あんこの味」

林仙堂で昔から変わらないものについて尋ねると、るり子さんから返ってきたのは「やっぱり、あんこの味じゃないですか」という言葉でした。

林仙堂では現在も自家製のあんこを作っています。お客様からも「あんこがおいしい」といわれることが多く、中には林仙堂のあんこを気に入って、1kg、2kgと購入していく方もいるそうです。

長く続くお店にとって、味を守ることは簡単なことではありません。

それでも、昔から受け継いできた製法を大切にしながら、現在は息子さんがあんこ作りを担っています。

味を受け継ぐ役割も、少しずつ次の世代へ。

大きな病気を経験して見えた「働き方」

林仙堂では、そんなバトンの受け渡しがすでに始まっています。

聖二さんは以前、大きな病気を経験しました。

当時はコロナ禍でもあり、仕事を強制的に止めざるを得ない状況になったと振り返ります。

現在も以前とまったく同じようには動けない部分がありますが、道具を工夫しながら、できることを続けています。

「片手でできる道具とかを考えて」と話す聖二さん。

そして今は、息子さんが仕事の中心を担うようになっています。

長年、自分自身が担ってきた仕事を、少しずつ次の世代へ継いでいく。それは、お店を続けるうえで大きな転換点なのかもしれません。

「その子らしくやればいい」次の世代への想い

これから林仙堂を受け継ぐ息子さんに、どんなことを望んでいるのか。

るり子さんは、「その子らしくやればいい。私は、やり方に固執しなくていいと思ってる」と話してくれました。

長く続く老舗だからこそ、「昔からこうだった」というものを守り続けるイメージがあります。

しかし林仙堂では、必ずしもそうではありません。守るべき味は守る。

でも、次の世代が新しいことに挑戦することも否定しない。聖二さん自身がそうやって新しい商品を生み出してきたように、次の世代にも自分たちなりの林仙堂を作ってほしいという想いが感じられます。

「その日その日を精一杯」積み重ねてきた65年

長く続くお店というと、順調に右肩上がりで成長してきたようにも思えます。

しかし、るり子さんは林仙堂について、「その日その日を精一杯頑張ってるっていう感じ」と話します。

昔は従業員を多く抱え、観光土産品も大量に扱っていた時代がありました。そこから少しずつ規模を変え、現在の林仙堂があります。

大きくすることだけが「続ける」ということではない。無理をせず、その時代に合った形で、一日一日を積み重ねていく。

その積み重ねが、65年以上という時間になっています。

人気商品の「米からだんご みたらし」を実食

今回まずいただいたのは、「米からだんご みたらし」。

その名前の通り、米から作った団子が特徴の商品です。一般的な団子とはひと味違い、口に入れると米から作られた団子ならではの食感を楽しめます。もちっとした弾力がありながら、噛むほどに団子そのものの味わいが感じられます。

そこに絡むのが、みたらしの甘じょっぱいタレ。

甘さと塩気のバランスがよく、団子との相性も抜群です。

るり子さんも、「お米から作るから、食感が全然違うでしょう」と話していました。

実際に味わってみると、タレだけではなく団子そのもののおいしさを楽しんでほしい商品だと感じます。

もう一つの人気商品「もちもち生どら」

続いていただいたのが、「もちもち生どら」。こちらは、昔ながらのどら焼きとは少し違った、現代的な和スイーツです。

名前にもある通り、生地はもちもちとした食感。ふんわりしたどら焼き生地とはまた違う、弾力のある食感が楽しめます。

そこにあんことクリームが組み合わさることで、和菓子らしい甘さと洋菓子のようなまろやかさを一緒に味わえます。

「昔ながらの和菓子だけではなく、新しいものも食べてみたい」という方にもおすすめしたい一品です。

「まだあった!」何十年ぶりに帰ってくるお客様

林仙堂を長く続けてきて、るり子さんが「続けてきてよかった」と感じる瞬間について話してくれました。

それは、昔のお客様が何十年ぶりに戻ってきてくれたとき。

子どもの頃に林仙堂でソフトクリームを食べた人が、大人になってから訪れ、「まだあった!」と喜んでくれることがあるそうです。

愛媛大学の寮で学生時代を過ごした方が、久しぶりに松山を訪れ、林仙堂に立ち寄ることも。

中には、自分の子どもを連れて来店する方もいるといいます。

お菓子の味だけではなく、その人の思い出の中に林仙堂が残っている。

これは、65年以上地域で営業を続けてきたからこそ生まれる、特別なつながりなのかもしれません。

これからも「町の小さなお菓子屋さん」として

最後に、これから林仙堂を訪れようとしている方へのメッセージをお願いしました。

聖二さんは「町の小さなお菓子屋ですけど、気に入ったものがあれば、来ていただけたらありがたいです」とニッコリ。

昔から変わらないあんこの味。新しい時代に生まれた生どらや米からだんご。そこには林仙堂らしさが詰まっています。

松山の人たちの記憶に残る、町のお菓子屋さんであること。

65年以上かけて積み重ねてきたものを大切にしながら、これからは次の世代が新しい歴史を作っていきます。

松山を訪れた際には、ぜひ林仙堂へ。昔から変わらない味と、これから変わっていく林仙堂。その両方を楽しんでみてはいかがでしょうか。

林仙堂

住所:愛媛県松山市木屋町3丁目10-12

営業時間:9時から20時

定休日:日曜

電話:089-925-5655

※本記事の内容は2026年8月取材時点のものです。最新の情報は店舗へご確認ください。

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この記事を書いた人

世界のわたなべけん

地域に眠る人・場所・会社を取材し、 世界に向けて発信しています。 現場に足を運び、丁寧に伝えることを大切にしています。 地域の価値を最大化し、世界に届けるのがテーマです。

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