災害が起きたとき、被災した地域に駆けつけるボランティア。
ニュースなどで活動の様子を見る機会はあっても、実際に被災地へ入り、被災した方と向き合った経験がなければ分からないこともあります。
今回、熊本での災害ボランティア活動の責任者となったのが、愛媛県社会福祉協議会の川原さんです。
現地での活動を通して感じたのは、作業を終わらせることだけではない「寄り添う支援」の大切さでした。
災害ボランティアとして初めて現場に入る

今回、愛媛県から19人のボランティアが被災地へ向かいました。
その中には高校生も含まれていました。
川原さんにとって、災害ボランティアとして実際の現場に入るのは初めての経験だったそうです。
これまで、社会福祉協議会の職員として、調整業務などに携わってきた川原さん。被災地の状況を写真や情報で見ることと、実際に現地へ足を運ぶことには大きな違いがありました。

「実際に行ってみて、どういった動きをするかという難しさはありましたね」と振り返ります。
災害現場では、状況に応じて柔軟に動く必要がありました。現地の被害状況も、支援を必要としている人の事情も、一つとして同じではありません。

だからこそ、事前に得ていた情報だけでは分からないことが、現場には数多くありました。
「もう大丈夫」と言われても終わりではない

活動の中で、特に印象に残った出来事があったそうです。
川原さんたちが訪れた高齢の女性の自宅では、片付けを進める中で、女性が「もう大丈夫です」「捨ててください」と話していました。
しかし、よく見ると、そこには着物など大切なものもありました。

被災直後は気が張っていて、「捨てても大丈夫」と言ってしまうこともあるかもしれません。
その言葉だけを受け取り、支援する側の判断でどんどん片付けてしまえば、後になって「本当は残しておきたかった」と思う可能性もあります。
川原さんが現場で感じたのは、単に作業を早く終わらせることではありません。

「相手の背景などを読み取らずにやると、せっかくの支援が相手を傷つけることになる可能性もある」と川原さんは語ります。
災害ボランティアに必要なのは、目の前の作業だけを見るのではなく、その人がどんな状況に置かれているのかを考えること。

被災者の気持ちに寄り添いながら、一つひとつ確認して進めることが重要です。
「ありがとう」の言葉が活動の力になる

もちろん、災害現場での活動は簡単なことばかりではありません。
川原さんたちの活動でも、午前中の作業は完了できたものの、午後の活動は時間の都合で最後まで終わらせられませんでした。
「もっとやりたかった」という心残りもあったそうです。

それでも、活動を通して大きな励みになったのが、被災した方からの「ありがとう」という言葉でした。
実際に人と向き合い、必要とされていることを感じる。
その経験は、これからの活動にもつながっていきます。
現場に行ったからこそ分かったこと

今回の経験を通して、川原さん自身にも変化があったそうです。
現地へ行かなくとも、情報として被害状況を知ることはできます。

しかし、実際にその場所へ行き、被災した方と話し、家の中を見て、片付けをする。
その経験によって、これまでとは違った視点が生まれたと言います。
「実際に現地に行って分かったことだったりとか、その状況も、聞くだけでは分からなかったところも多い」

災害支援は、マニュアルだけで完結するものではありません。
現場での経験を積み重ね、その経験を次の支援につなげていくことが重要です。
高校生も参加、若い世代が被災地を見る意味

今回の活動には、高校生も参加しました。
川原さんは、若い世代が実際に被災地を目で見ることにも大きな意味があると考えています。
「現地の状況を目で見て、高校生たちも何か感じたものがあるでしょう」

災害や防災について、誰かから話を聞くだけではなく、自分の目で見る。
そして、その経験を友人や家族など身近な人に伝える。
一人の経験が、周囲の防災意識を高めるきっかけになる可能性があります。
災害が起きていない今だからこそ

愛媛県でも、南海トラフ地震への備えが重要視されています。
では、私たちは普段から何をすればいいのでしょうか。
川原さんが挙げるのは、決して難しいことではありません。

防災グッズを準備すること。
自分が避難する場所を確認すること。
ハザードマップを見ること。
「まずは基本的なところから始めることが大切」だと言います。
そして、もう一つ重要なのが、災害が起きていない「平時」のつながりです。

「有事ではないときの関係こそが大事」
普段から地域で顔を合わせたり、声を掛け合ったりする関係があれば、いざというときに助け合うことにもつながります。
災害に強い地域は、災害対策だけで作られるものではありません。

日常の中にある人と人とのつながりも、大きな力になるのです。
熊本での活動を経験した川原さんの言葉から、災害への備えは「災害が起きてから」ではなく、「何も起きていない今」から始まっていることを改めて考えさせられました。
これから目指すのは「地域を支える」こと

川原さんに、これから挑戦したいことを聞くと、災害だけに限定した答えではありませんでした。
「社協として、地域を支えたり、地域のつながりを作りたい」
災害なのか、教育なのか、別の支援なのか。
切り口は違っても、その根本にあるものは同じだと言います。

「根本は地域の福祉、支え合い」
災害支援は、その根幹を考えるきっかけの一つに過ぎません。
誰かが困ったときに支えられる地域を作る。
一人では難しいことを、地域で支え合える仕組みを作る。
川原さんとの活動やお話を聞く中で、多くのことを学ばせていただきました。
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※本記事は2026年8月執筆時の内容です。



