フード  |    2026.11.03

「熟成生ガトーショコラの店 KOKUU(コクウ)」変化を楽しむ【愛媛県松山市】

愛媛県松山市北条にある「熟成生ガトーショコラの店 KOKUU(以下、コクウ)」。

チョコレートとコーヒーを専門に扱う同店は、濃厚でなめらかなガトーショコラを楽しめるお店です。

ただ、店主さんにお話を伺っていると、コクウの面白さは「おいしいガトーショコラを作ること」だけではないことに気づきます。

季節やお客様の声をデータとして蓄積し、AIも活用しながらレシピや発信方法をアップデート。

さらに、ワンオペという環境を生かしながら、北条という場所で新しい挑戦を続けています。

今回は、そんなコクウのガトーショコラへのこだわりや「これから」に注目してみました。

店名に込められた意味

まず気になったのが、特徴的な「KOKUU」という店名です。店主さんによると、チョコレートとコーヒーを中心としたお店にしたことから、それぞれの「コク」をイメージして名付けたそう。

ただ、「コク」とは具体的に何なのか調べてみると、単純に「濃い味」という意味ではありません。さまざまな味や香りが組み合わさることで感じられる深みや濃厚さ。

一つの要素だけではなく、いろいろなものが重なって生まれる「コク」という言葉に面白さを感じたことも、店名の由来になっています。ガトーショコラとコーヒーという異なるものを組み合わせ、新しい味わいを楽しんでもらうという同店のスタイルにも、ぴったりの名前です。

最大のこだわりは「48時間熟成」

コクウのガトーショコラを語るうえで欠かせないのが、48時間という時間です。

店主さんが作るのは、小麦粉を使わない生ガトーショコラ。焼き上がったらすぐに提供するのではなく、冷蔵で保存しながらじっくり時間を置きます。

なぜ48時間なのでしょうか。

その理由は、時間を置くことでチョコレートの香りと味わいが落ち着いてくるからです。

出来立ての状態では、チョコレート以外の副素材の香りが強く感じられることがあります。そこから時間が経つことで、さまざまな香りが落ち着き、チョコレートそのものの香りや味わいが際立ってくるのだそう。

さらに、水分も全体に行き渡ることで、よりなめらかな口当たりに。

店主さん自身が「おいしい」と感じる状態まで時間をかけて仕上げています。

小麦粉を使わないから生まれる「とろける」食感

実際に食べてみると、最初に感じるのはチョコレートの濃厚さ。そして、口の中に入れた瞬間にスッとなめらかにほどけていくような食感が印象的です。

小麦粉を使わず、ギュッと密度の高い仕上がりにしていることも、この食感の特徴です。

さらに、口の中の温度で溶ける素材によって、まるで生チョコレートのようななめらかな口どけを感じられます。

ただし、生チョコレートとは製法が異なるため、あくまで「口どけの感覚が近い」というイメージです。小さめの一切れでも、しっかりとチョコレートを食べた満足感があります。

チョコレートを引き立てるコーヒー

コクウでは、ガトーショコラだけでなくコーヒーにもこだわっています。

店主さんが「ガトーショコラに合わせたい味」を伝え、コーヒー専門店にブレンドしてもらっているそうです。コーヒーそのものを強く主張させるのではなく、チョコレートのコクを引き立てることを意識しています。

「チョコレートとコーヒー」という店名の由来にもなった組み合わせ。

ガトーショコラと一緒に味わうことで、より深い味わいを楽しめそうです。

「変化がある方が楽しい」

店主さんは、もともと結婚式関連の仕事を長く経験してきた方。料理人として専門的な修業をしてきたわけではありません。

それでも現在のガトーショコラづくりに、これまでの仕事で培った経験が生きているといいます。

「いいものを作るだけじゃなくて、どう伝えるか、どう感じてもらえるかが大事」

これは結婚式の仕事にも通じる考え方なのだそう。

お客様が何を感じるのか、どうすれば楽しんでもらえるのか。

そうした視点を大切にしているからこそ、コクウでは「食べる」という行為そのものを楽しんでもらえるような工夫が随所に見られます。

ワンオペの相棒は「AI」

コクウを語るうえでもう一つ外せないのが、AIの活用です。

店主さんは現在、基本的に一人でお店を運営しています。

仕込み、営業、商品開発、情報収集、SNS、広告など、やることは少なくありません。そこで活用しているのがAIです。

レシピ開発のための情報収集はもちろん、トレンドや広告についての情報もAIを活用して収集。

さらに、お客様の声や販売履歴、SNSで使用した画像や動画などもデータベースに蓄積しているそうです。

そのデータをもとに、

「どの商品に反応があったのか」

「どんな発信が効果的だったのか」

「次は何を試すべきか」

といったことをAIと一緒に考えていきます。

定番の品質基準を保ちながら、気温や季節、お客様の感想や口コミ、店内データ、外部のトレンドを照らし合わせ、必要な範囲でレシピや発信方法を調整しています。

店主さん自身、会社員時代から数字やデータを管理することが好きだったそう。その経験とAIを組み合わせることで、ワンオペでありながら、まるで複数のスタッフがいるような運営体制を目指しています。

AIの役割を、全体を整理するマネージャー役、商品開発、広告・販促、データ管理などに分けているとか。

「優秀な社員がいっぱいいるような感じ」という表現が印象的でした。

AIに「答え」を出してもらうのではなく壁打ち相手にする

コクウでのAI活用は、単純にAIに任せきるというものではありません。例えば盛り付けを考えるときも、素材の写真をAIに渡して候補を出してもらう。そこから店主さん自身が考え、実際に試してみる。

つまり、AIを「正解を出す機械」としてではなく、アイデアを広げる相手として使っています。

「AIにもアイデアを出させたうえで、自分で考える方が、一人よがりじゃないことができる気がする」という店主さんの言葉には、AIとの付き合い方のヒントが詰まっています。

一人だからこそ、自分の考えだけに閉じてしまう。そこにAIという別の視点を入れることで、新しい可能性を探っているのです。

店内に流れる音楽もAIで制作

実は、店内で流れている音楽にもAIが使われています。

なんと、ガトーショコラをテーマにした楽曲をAIで制作。歌詞もAIに作ってもらい、お店の空間に合わせて流しているそうです。

店内に入るとチョコレートの香りが広がり、そこにオリジナルの音楽が流れる。ガトーショコラを食べるだけではなく、視覚、嗅覚、聴覚まで含めて「コクウで過ごす時間」を作っているように感じます。

香りにもこだわりがあり、取材時にはチョコレートの香りをベースに、スイートオレンジやトンカ豆などを取り入れていました。

「楽しくないと、やっていてもしんどい」店主さんはそう話します。商品開発も、店づくりも、情報発信も。自分自身が楽しみながら試行錯誤することが、結果としてお客様にも伝わっていくのかもしれません。

北条だからこその課題も

一方で、北条という場所での店舗運営には課題もあります。

店主さんによると、平日と週末では売上に大きな差があるそう。

駅前のように人が自然に流れてくる場所ではないため、「歩いていて気になったから入ってみる」というお客様よりも、SNSなどを見て目的を持って訪れるお客様が多いといいます。

そのため、今後は営業日や働き方についても試行錯誤しているところ。

ただ、北条という地域がもっと活性化していけば、お店の可能性もさらに広がっていくと考えています。

「自分のお店がその一役を担えたら」

そんな思いも持っているそうです。

まずは通販、そしてその先へ

今後について聞くと、まず力を入れていきたいのが季節商品の展開と通販です。

その先には、店舗拡大や2店舗目という可能性もありますが、まずは現在の店舗を安定させることを重視しています。

「ワンオペでどこまでできるのか」という挑戦も、その一つです。AIを活用しながら、商品、発信、販売データを蓄積。

小さな改善を積み重ねていくことで、少しずつブランドを育てています。

変化を楽しみながら進化する

48時間かけて熟成させたガトーショコラ。季節やお客様の声によって変化するレシピ。AIを活用した商品開発やデータ分析。そして、店主さん自身が楽しみながら続ける店づくり。

コクウは、完成した一つの商品を守り続けるお店というより、お客様の反応を受け取りながら、少しずつ進化していくお店なのかもしれません。

「変化がある方が楽しい」という店主さん。

北条の小さな一軒から、これからどんなガトーショコラが生まれていくのか。

次に訪れたときには、前回とは少し違う味に出会えるかもしれません。

コクウで、自分だけのお気に入りの一切れを探してみてはいかがでしょうか。

店舗情報

住所:愛媛県松山市北条辻433-1 1階北側
営業時間:
【土曜、日曜】12:00〜17:00
【水曜、木曜】13:00〜17:00
定休日:月曜、火曜、金曜
SNS:Instagram

※本記事の内容は2026年9月取材のものです。最新の情報は公式Instagramなどでご確認ください。

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この記事を書いた人

世界のわたなべけん

地域に眠る人・場所・会社を取材し、 世界に向けて発信しています。 現場に足を運び、丁寧に伝えることを大切にしています。 地域の価値を最大化し、世界に届けるのがテーマです。

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