相模原駅と上溝駅のあいだに位置する、横山台。
横山台から徒歩10分ほどの場所には、市民の憩いの場でもある横山公園や、神奈川県立相模原高等学校があります。
横山台団地入口の交差点から見える、青い屋根が目印の「横山台珈琲館(よこやまだいこーひーかん)」。
47年以上にわたり、相模原でコーヒーを提供し続けてきた、75歳のマスター・鈴木義和さんにお話を伺いました。

47年以上続く秘訣とは?
「長く続けるためには健康が一番。」と、マスターは語ります。
運動も兼ねて、週5回ほど相模川の近くまで自転車でチラシを配っているとのことです。
「長くお付き合いしているお客様の多くがチラシをきっかけに、お越しいただきました。
地元の方以外にも、相模原に移住された方が来てくれる場合もありますね。」
お客様の半数ほどが常連で、市内在住者を中心に、東京都八王子市や埼玉県、千葉県など関東圏から訪れる方もいます。
年齢層は70歳以上が半数ほど。残りは20代~30代が中心です。
マスターが年齢を重ねたことで、以前より若い方に話しかけられることが増え、人生相談を受けたり、お友達を連れてきてくれたりすることもあるんだそう。
こだわりの自家焙煎

開業当初から使っている焙煎機は、今も現役で活躍中。
週に3~4日ほど自家焙煎をされています。1kgの焙煎に約1時間かかるそうです。
「天気や気温・湿度にあわせて、火加減や風量を微調整しています。
定期的に豆の焼き具合をチェックするのは大変ですが、丁寧に調整するとおいしいコーヒー豆が焼きあがるんです。営業中に焙煎するため、お待ちいただく場合もあります。」
今回、いただいたのは一番人気のコーヒー「コロンビア」。
甘くて飲みやすいとお伺いし、飲んでみました。
口当たりまろやかで美味しく、一番人気なのも納得の味わいです。
次に人気なのが「グァテマラ」。力が湧いてくるような、しっかりした味が特徴。
三番目に「モカマタリ」。少し酸味があり、もぎたての果実のような味わいです。

47年以上、地域と人を見つめて
長く続けてきたからこそ感じる、嬉しい瞬間について伺いました。
「三世代で来てくれるお客様が、昔を懐かしんで訪れてくれることですね」と、嬉しそうに話す鈴木さん。
そのほかにも印象的なエピソードを聞かせてくれました。
「開業当初、ある女性がよく来ていたのですが、最近、同じお顔立ちの方が来店されました。久しぶりに来てくれたんだなと思いながらも、年を重ねているはずなのに当時の若さのままで不思議に感じていました。
苗字を呼びかけてみたところ『こちらのお店に来たのは初めてなのに、なんで名前を知っているんですか?』と驚いたご様子。お伺いしてみると、当時来ていた女性のお子さんだったんです。とても驚きましたが、私以上にその方は驚いていましたね。」
一人ひとりのお客様を大切にされていることが伝わってくるエピソードです。
マスターが意識しているのは、自分が相手を覚えていると伝えること。そうすると、お客様とのつながりが続き、また足を運んでもらえるのだそうです。
「結果が出るまでに時間はかかりますが、地道な努力の積み重ねが大切ですね。
憩いの場として、ゆっくりと気が休まる時間を過ごしてもらえたら嬉しいです。」

そんなマスター自身も、相模原市上溝で生まれ、長くこの街で暮らしてきました。通勤の都合で1年ほど、相模原市に隣接する東京都町田市に住んだ時期もありましたが、上溝から2時間半かけて東京都内の勤務先まで通っていたそうです。
「古風で情緒があるのが相模原の特徴だと思います」
出身地である上溝では、「かながわのまつり50選」にも選ばれる、江戸時代から続く「上溝夏祭り」が、毎年7月後半の土・日曜日に開催されています。練習がとても厳しいというお囃子も、見どころの一つだそうです。
ホテルを退職して開業

大学卒業後は、皇居前にあるホテルに4年間勤め、フロント業務やレストランの会計係を担当しました。
将来を見据え、相模原から通いやすい場所で働くことを考えていた鈴木さん。
ホテルを退職した翌年、昭和54年(1979年)に開業。
当時についてお伺いしました。
「実は、コーヒーが特別に好きというわけではなかったんです。
大学時代にホテル系列のレストランで働いた経験があり、飲食系なら自分もできる自信があったのと、当時の喫茶店ブームも追い風となって、開業を決意しました。」
しかし、現実は甘いものではありませんでした。
「私のあとに続いて喫茶店を営んでいた実の弟から、料理の技術を何回もダメ出しをされたのが、特に辛かったですね。弟は若くして亡くなったのですが、今になって感じるのは、私や店を思うからこそ厳しく言っていたんだと思うので、当時の弟には本当に感謝しています。」

時代の移り変わりを感じる出来事
開業当初、横山台珈琲館から2km以内に20店舗ほど喫茶店があったそうです。
しばらくするとバブルが崩壊し、当時あった店は現在ではすべてなくなったそうです。
時代の移り変わりとともに、お店も変化し続けてきました。
世間が「グローバル社会」と言われ始めた時には、近隣の大学に通う留学生を講師に招き、英会話喫茶を約10年開いていました。
英語を学ぶだけでなく、国際交流の場として、地域のお子さんから社会人、シニアの方までさまざまな生徒さんがレッスンを受けに来ていたそうです。

近年、時代の流れを感じる出来事について伺うと、鈴木さんが投稿したSNSをきっかけに、遠方から店を訪れるお客様が増えたことだそうです。
「お顔は一度見たら覚えているので、初めて来た方もすぐに分かります」と、鈴木さん。
「お近くにお住まいですか?」と尋ねると、お店のSNSがきっかけだと分かることもあり、嬉しい瞬間のひとつだそうです。
今後の横山台珈琲館
2026年に75歳を迎えたマスター。若い頃のように働くのは難しくなったと感じるそうです。
ご自身の体と相談して、2025年より定休日を増やすことを決めました。
食事のメニューを減らし、ケーキのみの提供に絞っており、今後はコーヒー豆の販売を中心にする予定です。
「焙煎を始めて40年以上になりますが、感動する味わいのコーヒーを提供するために日々勉強しています。」と語る鈴木さん。
おわりに
昭和から令和へと時代が移り変わる相模原で、地域の方々にとって憩いの場、そして思い出の場所となっている「横山台珈琲館」。
おいしいコーヒーを求めて訪れる方はもちろん、マスターに会いに来るお客様も少なくありません。
一杯のコーヒーをきっかけに、人と人とのつながりが生まれ、親から子へと思い出が受け継がれていく。47年以上にわたり、そんな時間を見守ってきました。
相模原を訪れた際には、こだわりのコーヒーと、長い年月を刻んだ店内で、心が休まる時間を過ごしてみてはいかがでしょうか。

店舗情報
店名:横山台珈琲館
住所:〒252-0241 神奈川県相模原市中央区横山台1-1-17
電話番号:042-758-7668
営業時間:10:00~18:00
定休日:火曜日、木曜日
駐車場:あり(3台)
アクセス:JR横浜線「相模原駅」からバスで約10分。「日金沢上」バス停下車。




