もの・こと  |    2026.10.23

札幌市東区の花屋「はなはな」|刑事から花屋へ。つながっていた二つの仕事

札幌市東区の住宅街にある、週に3日だけ営業する花屋「はなはな」。

店主のayucoさんは、以前は警察官として、薬物や拳銃、DV・ストーカーなどに関わる刑事の仕事をしていました。花屋を始めたきっかけは、友人からの勧め。昔からの夢だったわけでも、もともと花が好きだったから始めたわけでもありません。

警察を辞め、子育てや家族との時間を過ごすなかで、思いがけず出会った花の仕事。振り返ってみると、まったく違って見える二つの仕事には、自分でも意外な共通点があったといいます。

「刑事の仕事は天職だった」それでも警察を辞めた理由

大学卒業後、警察官になったayucoさん。交番勤務を経て刑事となり、薬物や拳銃に関する事件を担当。その後はDVやストーカーへの対応などに携わりました。

「刑事の仕事は、私にとって天職でした」

事件ごとに状況は違い、完全なマニュアルがあるわけではない仕事。法律や判例、過去の書類を調べ、どう捜査を進めるかを考える。刑事になって間もない頃には、上司から一つの事件を丸ごと任せてもらったこともありました。

「任せてもらえたから、自分で考えることができた。信じてもらえたから、責任を持つことができた」

わからないことは調べる。それでもわからなければ聞く。そうやって自分で考えながら進める仕事は、ayucoさんの性格にも合っていたといいます。

一方、仕事を続ける中で、家族との暮らしやこれからの生活について考えることも増えていきました。仕事の負担も重なり、「潮時なのかな」と感じたayucoさんは、35歳頃に退職を決めます。

夢があったわけじゃない。花屋との偶然の出会い

退職後は、子育てや家族との時間を大切にしながら、スキーインストラクターやインバウンド向けの仕事などもしていました。やがて子どもが成長し、自分の時間が少しずつ戻ってきた頃、「何かまた始めようかな」と考えるようになります。

とはいえ、明確な夢や、やりたいことがあったわけではありません。最初に考えたのはカフェ。しかし、コーヒーが好きなわけでもなく、店を開くほど料理に自信があるわけでもない。そんな時、韓国で花屋をしていた友人から「花屋やったらどう?」と勧められました。

「『いや、花は別に好きじゃないな。花かー』と思ったんですけど、試しにレッスンへ行ってみたら、かわいいなと。そこで『できるかもしれない』って、ちょっと勘違いをして(笑)」

そこから約1年、レッスンに通い、ときには広島まで花を習いに行くことも。そうして、自宅の玄関で小さく花屋を始めることになりました。

「玄関花屋」から、週に3日の「物置花屋」へ

週に3日開く「物置花屋」

「自分に花屋ができるんだろうか」と思い、まずは試験的に自宅の玄関で店を構えるところからスタート。

オープン当初は、知り合いが興味を持って来てくれる程度で、お客さんは多くありませんでした。少しずつ、近所の人がふらりと花を買いに来てくれたり、Instagramを見てアレンジメントを注文してくれたりと、地域の中で店を知ってもらう機会が増えていきました。

夏になると玄関は暑くなり、花の管理も難しくなります。スペースも手狭だったことから、ほどなくして敷地内の物置へ移ることにしました。

空いていた敷地に新しく店を建てることも考えましたが、もともとあった物置を活用。外から店内が見え、入りやすいように扉をガラス張りにし、花を管理するためのエアコンを取り付けて「物置花屋」が完成しました。

まずは玄関で小さく始め、必要になったところだけ手を加えていく。そんなふうに少しずつ形を整えてきたやり方は、今の仕事の進め方にもつながっています。

刑事だった私と、花屋になった私。それぞれの共通点

個性的なアレンジメントが並ぶayucoさんのInstagram

「はなはな」を知ってもらう入口として、大きな役割を果たしているのがInstagramです。

花束やアレンジメントだけでなく、自身のこれまでの歩みや、刑事だった頃の想いも発信しています。なかでも特に反響が大きかったリールには、こんな言葉がありました。

「刑事だった私と、花屋になった私。違うようでいて、根っこは、きっと同じ」

刑事と花屋。一見すると、まったく違う仕事です。しかしayucoさんは、花屋を続けるなかで、二つの仕事の間に共通するものがあると感じるようになりました。

刑事だった頃は、相手の言葉やその場の状況から小さな違和感を捉え、それを手がかりに自分で考え、次の行動を選んでいました。花屋になった今は、お客さんの「かわいらしく」「明るい感じで」「個性的に」といった言葉から、求めている雰囲気をくみ取り、どの花をどう組み合わせるかを考えます。

言葉になりきらないものを受け取り、自分で考えて選ぶ。その姿勢は、刑事だった頃も今も変わりません。

「自分で考え、自分で選び、前に進んできた」

Instagramにつづられたこの言葉には、刑事と花屋という二つの仕事だけでなく、ayucoさん自身のこれまでの歩みが重なっています。

大きな夢より、目の前にあるものを一つずつ

現在は店舗での販売やアレンジメント制作に加え、パーティー会場の装花、自動車ディーラーのイベントで来場者が選んだ花をその場でブーケにする仕事など、店舗の外で花を届ける仕事も増えています。依頼は人づてに広がることも多く、店を始めてから、人とのつながりから新しい仕事が生まれることも増えています。

今後は、近所の人が気軽に花に触れられるような、アレンジメントなどのワークショップにも挑戦してみたいと考えているそうです。

目標を掲げて進むというより、その時におもしろいと思ったことや、目の前にある仕事に一つずつ取り組みながらできることを増やしていきたいと言うayucoさん。新しい仕事ではその都度発見があり、今あるものを少しずつ積み重ねながら進んでいます。

花屋になって嬉しい瞬間の一つは、花を買ったお客さんが帰っていく姿を見るとき。

「お花を持って帰るお客さんの背中がすごい素敵なんです」

1本でも花束でも、大事そうに抱え、足取り軽く帰っていく。その後ろ姿を見るのが、「やっててよかった」と思える瞬間だといいます。

刑事だった頃と、花屋になった今。仕事は大きく変わりました。それでも、自分で考え、自分で選び、そのとき目の前にあることに向き合う。ayucoさんは今も、その積み重ねの途中にいます。

はなはな

住所:北海道札幌市東区北15条東16丁目2番10号(地下鉄東豊線 環状通東駅 徒歩1分)

※駐車場あり

電話番号:011-768-8132

営業日・営業時間はInstagramをご確認ください

Instagram:@sweet_flower_hanahana

HP:https://turquoise504992.studio.site/

※ご注文・お問い合わせはInstagramのDMから

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この記事を書いた人

徳田 このみ

北海道札幌市在住のライター。Mediallでは、お店や事業など「何かを一人で始めた人」を中心に紹介しています。 その人の想いやこだわり、裏側にあるストーリーなど、丁寧に魅力を伝えます。

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