もの・こと  |    2026.10.23

「どこでも太陽光発電」実用第1号は厚木と相模原にーペロブスカイト太陽電池を県内に初導入ー

神奈川県は脱炭素化とエネルギー自給率を向上させる取り組みとして、従来のシリコン型太陽光が設置できなかった場所を県内発の新技術であるペロブスカイト太陽電池で埋めていく「どこでも太陽光発電」の実現を目指しています。その最初の一歩として、2026年12月頃を目標に2箇所の県有施設に国産のフィルム型ペロブスカイト太陽電池を県内初導入することを発表。環境省の支援事業に採択されたこの取り組みについて、神奈川県脱炭素戦略本部室に伺いました。

国内初の製品化となるペロブスカイト太陽電池

ペロブスカイト太陽電池は桐蔭横浜大学の宮坂力特任教授が中心となって約20年前に開発されました。フィルム型は従来のシリコン型太陽電池にはない「薄くて、軽く、曲げられる」という特性を活かして建物の壁面や弧を描く屋根、耐荷重の低い場所などにも設置できること、主原料のヨウ素の産出量は日本が世界第2位であることから大きな注目を集めている次世代型太陽電池です。

現在も各地で実証が進む中、2026年3月、積水ソーラーフィルム株式会社は国内初の市場供給製品となる「SOLAFIL(ソラフィル)」を発表しました。

ペロブスカイト太陽電池(Ⓒ積水ソーラーフィルム株式会社)

今回神奈川県が2箇所の県有施設に初導入すると発表した「フィルム型ペロブスカイト太陽電池」もこの製品となります。商用化されたばかりの現段階では生産量が少なく、従来のシリコン型太陽電池と比べるとコストが高いこともあり、環境省の「ペロブスカイト太陽電池の社会実装モデルの創出に向けた導入支援事業」を活用しての導入となります。しかしながら、実証データを取るためではなく、施設の電力として使うための実装です。電力系統にもつながっているそうです。

自然環境保全センターに設置される意味合い

1箇所目の設置施設は厚木市にある県立自然環境保全センター。丹沢や箱根など、県内の豊かな自然を次世代に引き継ぐため、自然環境の保全再生に取り組んでいます。屋根の耐荷重が低く、従来のシリコン型太陽電池が設置できなかったことが選ばれた理由ですが、生命との共生を図る施設に気候変動を抑制する再生可能エネルギーを導入することにも大きな意義を感じました。

県立高校の体育館に設置される意味合い

2箇所目は相模原市にある県立神奈川総合産業高校の体育館です。体育館の屋根は、県内に数多くありますが、耐荷重が小さいものや形状が蒲鉾型などのものが少なくありません。学校には地域の避難所としての役割もあるため、太陽光発電の導入が進められていますが、屋上にシリコン型を載せやすい校舎とは違い、体育館の屋根は載せにくい場所でした。県有施設には学校が多いこともあり、県はペロブスカイトの特性を活かす場所として、今後も導入を検討しているそうです。

発電容量約5kWからの最初の一歩

設置面積は、それぞれ約100平方メートル。発電容量は約5kWです。施設で使う電力の一部をまかなう規模で、すべてを自給するものではありませんが、神奈川発の技術であるペロブスカイトの実装がこの5kWから始まると思うと大きな一歩だと言えるのではないでしょうか。

県が率先して導入する狙いのひとつに、初期需要の創出があります。シリコン型に比べてまだコストが高いため民間事業者や一般家庭での設置はまだ先になると予想されているからこそ、自治体が国の補助金も使って先行導入することで量産化とコスト低下を促す。そんな段階的な道筋を描いています。

見て、知って、可能性を感じてほしい

高校の体育館の設置場所は、学校の敷地内にあるため、一般の方は見学できませんが、生徒に向けて、最先端の技術を実際に見られる場として、普及啓発に活用することが検討されています。また、自然環境保全センターは屋根そのものを見るのは難しいものの、隣には一般の方が入れる展示スペースもあり、発電量を表示するモニターも設置予定です。

「県民の皆さんに最も伝えたいのは、まずペロブスカイトという新しい太陽電池を知ってもらうことだ」と、脱炭素戦略本部室。薄く、軽く、曲げられる。これまでの太陽電池になかった特性により、身近な場所や曲面にも設置できる可能性があります。また、窓ガラスなどへの展開も、製品化の状況や供給量、コストを見ながら、予算の検討材料にしていくそうです。将来的には、バスの屋根、信号機、衣服、携帯基地局まで、「どこでも太陽光発電」を目指しています。

神奈川発の技術を育てていく県の挑戦が、ここから始まっていくのです。

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この記事を書いた人

青葉薫

【神奈川県公認Mediallライター】横須賀市秋谷在住。全国の農家を取材した書籍「畑のうた 種蒔く旅人」が松竹系で「種まく旅人」としてシリーズ映画化。別名義で放送作家・脚本家・ラジオパーソナリティーとしても活動。執筆分野はエンタメ全般の他、農業・水産業、ローカル、子育て、環境問題など。横須賀市都市計画審議委員、横須賀市環境審議委員。

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