もの・こと  |    2026.10.09

【広島県福山市】「そこに助けを求める人がいるから」のべ1万人以上の親子を支援してきたNPO法人理事長に聞く

2026年11月12日(木)、『不登校の子が新しい一歩を踏み出す時』と題した講演会が福山市で開催されます。講師は、自身も不登校の経験がある石井しこうさん。主催は、福山市で20年以上にわたって親子を支援してきたNPO法人こどもステーションです。

理事長の奥野しのぶさんは、20年以上にわたってのべ1万人を超える親子に寄り添ってきました。子育て広場から始まった支援は、シングルマザー支援、面会交流支援、子ども食堂、不登校の親の会など、さまざまな方向に広がっています。

奥野さんのこれまでの活動と、講演会について聞きました。

始まりは子育てサロン

NPO法人こどもステーション理事長 奥野しのぶさん

「2003年から自宅近くの公民館で週1回、保育所に上がる前の子どもと保護者の『子育てサロン』を開いたのが、私たちの活動の始まりです」

NPO法人こどもステーション理事長の奥野しのぶさんは、そう振り返りました。

2005年、集まっていた保護者たちから「自分たちだけでなく、他の保護者にもこの楽しい場を利用してもらいたい」との声が上がります。これをきっかけに、子育て広場は3つの公民館で開かれるようになりました。また、地域の子育て情報をまとめた情報誌「はらっぱ」の発行も始めます。

その後、広島ガス東中国が新しいショールーム「ハートラボ」を建設する際に、その一部を借りて活動することとなりました。2010年には、NPO法人こどもステーションを設立します。

そして2012年、ハートラボ2階の「もこルーム」を拠点とした、本格的な活動が始まったのです。

広島ガス東中国のショールーム「ハートラボ」の2階が活動拠点
広島ガス東中国のショールーム「ハートラボ」の2階が活動拠点

活動の広がり

2階の窓に「もこルーム」と貼られているのが見える
2階の窓に「もこルーム」と貼られているのが見える

2012年からは、子育て広場のほか、イベント託児、シングルマザー支援、子ども食堂、不登校の親の会、離婚家庭の面会交流支援など、活動は広がっていきました。

授乳室もあり、赤ちゃんと一緒でも安心して利用できる
授乳室もあり、赤ちゃんと一緒でも安心して利用できる

「月1回の『しんぐるまざぁずカフェ』を始めると、『一緒にご飯を作って食べたいね』という意見が出ました。そこで、子ども食堂を始めました。そのとき、ひとり親家庭支援として寄付いただいた食品があったので『ほしいものがあったら持って帰って』と声をかけたんです。すると、泣きながら持ち帰るお母さんがいました。普段、みんなの前では明るく振る舞っていても、シングルマザーが置かれている状況は楽ではない、それを痛感した出来事でした」(奥野さん)

そこから、拠点へ足を運ぶことができない人にも届けられるようにと、メールマガジンを介したフードドライブ(食糧支援)事業が始まりました。広島県内を対象に、毎月定期的に食料品を送るほか、夏休み期間中だけ、イベント時だけなど、さまざまな形でひとり親家庭支援をおこなっています。

2021年からは、ひとり親家庭の子どもたちに入学祝い金を届ける事業も実施中です。

もこルーム内部
もこルーム内部

面会交流支援

子どもたちがたっぷり遊べる室内
子どもたちがたっぷり遊べる室内

2012年の民法改正で、子どものいる夫婦が離婚した場合、養育費の分担と面会交流について、子どもが育つのに必要なこととして夫婦で取り決めることが条文に盛り込まれました。

「離婚した元夫婦が、直接顔を合わせるのが難しい場合があるんです。そのような人たちの面会交流や日程調整を支援し、さまざまな相談に乗っています」

子どもたちと保護者・スタッフを含め、みんなで安心と安全な場を作っている
子どもたちと保護者・スタッフを含め、みんなで安心と安全な場を作っている

不登校の親の会と講演会

不登校やひきこもりの子どもがいる親の会を始めたのは、2014年。不登校の子どもがいるスタッフたちがお互いに語り合ってきたことから、同じ悩みを抱える人たちの語り合いの場を作ろうと考えたことがきっかけでした。

保護者向けのドリンクコーナー
保護者向けのドリンクコーナー

「集まって話を聞いてもらい、共感してもらえるだけで、ほっとできることがあります。情報の共有ができるのも、大切なことでした。

講演会については、昨年から多くの協力団体が一緒に取り組んでくださっています。
今年の講師にお呼びした石井しこうさんは、不登校ジャーナリストとして『不登校してても大丈夫』というメッセージを送り続けている人です。

最近では、ドラマ『タツキ先生は甘すぎる!』のフリースクール監修をしたり、中川翔子さんと一緒に不登校動画甲子園を運営したり、卒業式イベント「卒業式をもう一度」を開いたりと、さまざまな活動をされています。

実は石井さんのことは石井さんが学生の頃から知っているのですが、素敵な大人になってくれたと感じています。ぜひ多くの方に、石井さんの話を聞いていただきたいですね」(奥野さん)

講演会のチラシ(表)
講演会のチラシ(表)
講演会のチラシ(裏)
講演会のチラシ(裏)

そこに助けを求める人がいるから

保護者向けの書籍も多数
保護者向けの書籍も多数

奥野さんのお話を聞き、筆者は、長年にわたって幅広い支援を続けてこられたことに驚きました。「なぜそこまでするのですか」とたずねると、奥野さんは一瞬考えてから顔を上げ、こう言いました。

「そこに助けてほしいという人がいるからです。私たち自身も『誰か助けて』と思うこともあります。ですから、私たちも他の機関と繋がって、どうすればその人が望むことを実現できるかを考えます。もちろん、できることとできないことがありますが、その人が『自分は独りぼっちじゃないんだ』と思えれば、自分で選んで決めていけるんです。

不登校支援では『この子はこれでいいんだって思えました』という言葉をよく聞きます。私たちがその人たちに大きな影響を与えているとは、まったく思っていません。立ち上がる力はその人たちが持っていると思うんです。

実際みんなそうやって、一歩ずつ階段をのぼっていっています。そのうえで、社会の仕組みを変えていくことも、必要だと思っています。

誰か一人でも、『あなたは間違ってないよ』と言ってくれる人がいれば、立ち上がるきっかけになるかもしれません。『あそこに行けばここから出るヒントが見つかるかもしれない』そう思ってもらえる場所でありたいですね」

奥野しのぶさん
奥野しのぶさん

筆者自身も真っ暗な闇の中にいたときに、「そのままでいいんですよ」と寄り添っていただいた言葉に背中を押され、前に進めた経験があります。他の人の話を聞いて、言葉にできなかった子どもの思いに気づいたこともあります。

不登校やひきこもりの子どもに寄り添うヒントを見つけに、講演会へ足を運んでみてください。
立ち上がるきっかけがほしいときには、「もこルーム」の扉を開けてみてください。
そこには、一緒に子どもたちの育ちを見守ってくれる人がいます。

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この記事を書いた人

山口 ちゆき

広島県福山市在住のライター。地方で輝く人の物語を伝えたいと、日々取材に飛び回っています。好きなお酒は辛口の日本酒。

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