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人  |    2026.09.21

世界を渡り歩いた元プロサッカー選手が、山梨で挑む。部活動の地域展開とスポーツの受け皿づくり

部活動を学校から地域へと広げる「地域展開」。全国で進むこの流れは、教職員の負担を軽くする一方で、受け皿が追いつかず「続けたいのに続けられない」子どもを生みかねない課題も抱えています。

山梨も例外ではありません。そんななか注目したのは、この課題を目の当たりにし、自ら現場で受け皿をつくろうと動く一人のコーチです。中央市から始まり、いまは甲府市の国母エリアを拠点に活動するサッカークラブ「Striver Football School(以下、ストライバーフットボールスクール)」。代表・石倉大河(いしくら たいが)コーチの想いと取り組みを伺いました。

「続けたいのに、続けられない」子どもたちのリアル

部活動を地域へ広げる流れのなかで、課題に対応する仕組みも動き始めています。山梨県には、指導者と活動の場をつなぐ人材バンク「スポカル山梨」(https://yamanashi-partner.spocul-bank.jp/)が整えられており、地域でスポーツを支える担い手と子どもたちを結ぶ役割が期待されています。地域展開に伴う課題への対策で、大河コーチも指導者として登録していると言います。

しかしこうした制度の話とは別に、現場ではまた違ったことも起きています。

甲府市国母エリアでは、かつて当たり前にあったスポーツ少年団や中学生のクラブが姿を消し、「近くにサッカーをする場所がない」「思うようにプレーできない」という状況になっているそう。働き方改革や少子化などさまざまな要因が重なり、部活動をはじめ、子どもたちの活動の場が少なくなっているのは保護者としても悩ましい状況です。

「やりたいのに、できない」子を、ひとりにしない

大河コーチが担おうとしているのは、まさにこの「やりたいのに、できない」と悩む子どもを取り残さない役割です。

コーチが運営するクラブは「公式戦を見据えたクラブ活動」と「気軽に参加できるスクール活動」を同じ練習日のなかで両立させています。練習できる日が多く設けられているため、中学に部活がない子も、部活とあわせてもっと練習したい子も、それぞれのかたちでサッカーを続けられます。

もちろん初心者も歓迎。「初心者を、上手いと言われる選手よりも上手く育てたい」と大河コーチは言います。ユニフォームやボールはできるかぎりクラブが用意し、家庭の負担を軽減。また、英会話に触れる時間も設けたりと、子どもたちの「やりたい」が叶う環境を整えています。

お話の中で印象的だったのは、他のチームへ移りたい子も戻ってくる子も歓迎する姿勢です。チーム移籍は子どもだけでなく親にとっても悩みの種。

「チーム移籍は悪いことではありません。むしろいろいろなコーチのもとで経験することも必要だと感じています。チームとしては、離れたくないと思えるチームにするだけ。子どもの意志が第一です」。子どもたちの進路や叶えたい夢にしっかり向き合うといいます。

4歳でボールに触れ、世界へ。そして山梨へ

大河コーチの歩みは、そのまま取り組みの土台になっています。

4歳でボールに触れ、中学2年生で単身ブラジルへ1カ月の留学。街のいたるところで大人も子どもも一緒にボールを蹴る光景に、強い刺激を受けたといいます。複数の強豪校やJクラブからのオファーがあったなかで、大河コーチが選んだのは歴史ある帝京高校。卒業後はモンテネグロ、オーストラリア、スペインでプロとして活動していました。

指導者としての原点は、オーストラリアで立ち上げた子ども向けスクール。

気の乗らないまま続けていた当時、「子どもに関わるということは、その子の人生の一部になるということ。その覚悟がないならやめた方がいい」と、マネージャーから言葉をかけられたそう。この言葉で子どもたちと向き合う姿勢が変わり、今につながっていると言います。

ドリブル特化から、“基礎の徹底”へ舵を切る

かつてのストライバーは、ドリブル技術を前面に出していました。しかし今、大河コーチが力を注ぐのは「止めて蹴る」という基礎の徹底です。「止める」は、レベルの高くない相手とならなんとなくでもできてしまう。その重要な基礎が中途半端なまま試合の経験だけを積んでいくと、レベルの高い環境へ進んだときに通用しなくなってしまう。そこに危機感があるといいます。

ボールを正確に止め、正確に蹴る。この土台を初期に徹底しておけば、その先でどんな道にも対応できます。だからこそ、いまはあえて基礎に時間をかける。答えを教えるのではなく「なぜそうなるのか」を自分で考えさせ、いずれ自分の力で進路を選べる選手になってほしい。それが大河コーチの育成の想いです。

今の活動の先に描く、地域創生というビジョン

大河コーチにとって、いまの一つひとつの活動自体が地域創生の一歩でもあります。

とりわけ思い描いているのが、県外や海外のチームが合宿に訪れたくなる環境を、山梨につくること。これは、現役時代や海外での指導で築いた人とのつながりが生きているからこそのビジョンです。実際に県外のチームから「山梨で合宿したい」「山梨でこんなことはできないか」と大河コーチを頼る声が寄せられているといいます。

世界各国の選手やチームとの交流も、国内に広がる縁も、この構想の原点。県外や海外からチームがやってくれば、宿泊施設や飲食、交通といった分野にも波及し、地域経済の活性化につながります。人の少ない時期にあえて大会を開けば、新たな人の流れも生まれます。

こんな未来を思い描きながらも、大河コーチが見つめているのは、あくまで目の前の子どもたち一人ひとり。その日々の積み重ねの先に、山梨の未来がつながっています。 

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「一人でも来てくれるなら、全力でやります」

自身の経験を次世代に伝える覚悟と、社会の課題に向き合う姿勢を感じられる一言が響きます。

大河コーチは、子どもたちだけでなく保護者との対話も歓迎しているそう。プレーのことや進路のこと、サッカーの小さな悩みまで、気軽に相談してほしいといいます。

一人ひとりの子どもと本気で向き合いながら、その先に山梨の未来まで見据える大河コーチ。その挑戦がこれからどんなふうに実を結んでいくのか。私も一人のファンとして、応援しながら楽しみに見守っていきたいと思います。 

【クラブ情報】

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この記事を書いた人

新田ミキ

お出掛け大好き山梨県在住フリーライター。 趣味は、旅行・読書・おいしいものを食べること。元旅行会社社員の目線で、山梨県を中心に各地の魅力を発信します。 2児のママでもあるため、子どもと楽しめるスポットを探すのも大好き! リアルな情報をお届けします。

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